東芝「ダイナブック」斬新じゃない戦略の勝算 シャープとの連携で何が変わるのか
目先の課題としては、最も水平分業が進んだ製品ジャンルのひとつである“パソコン”の売り上げを伸ばしていかねばならないが「ヒューレットパッカードやレノボと真正面から当たって勝てるとはもちろん思っていないが、戦っていくための要素は持っている」(石田会長)と答えた。
ではどんな部分で競争力を発揮できるのか。
覚道社長兼CEOは「(東芝製パソコンは)独自にBIOS開発してきた実績がある。この技術とセキュリティー技術を組み合わせ、業態や顧客に応じてセキュリティー機能を提供するといったこともできる」という。
BIOSとはパソコンを開発するうえで最も基本的なソフトウエアのことだ。大多数のメーカーはライセンス購入していたが、東芝の場合は自社で開発してきた経緯がある。現在、BIOSは必要のないコンポーネントだが、別のファームウエアとして形を変えており、企業向けパソコンのジャンルで一定のニーズが得られると考えているようだ。
これ以上後ろに下がることはできない
“ファームウエアからカスタマイズしたセキュリティー技術を提供”が本当にできるのであれば、パソコンジャンルでも中国メーカーが多い中にあって、一定のニーズは確かにあるのかもしれない。東芝クライアントソリューションがDynabookとなって目指すのは、世界シェアで言えば0.6%を2年で1.2%に増やすということであり、10%を20%にするのとは根本的に状況が異なる。
直近の目標である2020年の売上高2倍に向けては、復活の道のりではなく事業を反転させるだけの基礎作りという意味合いが強いものになるはずだ。かつて世界的なトップPCメーカーだった頃に培ったノウハウや技術力を用い、シャープ(そして鴻海)のリソースと組み合わせ、どこまで競争力を高めることができるのか――。
目標数値こそあれ、新たに評価すべき要素のなかった今回の中期計画で将来を見通すことはできない。しかし、もはや“これ以上、後ろに下がることができない”ところにまで来ているだけに、あとは“前へと進む余地”しか残っていない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら