東芝「ダイナブック」斬新じゃない戦略の勝算 シャープとの連携で何が変わるのか

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東芝クライアントソリューション・社長兼CEOの覚道清文氏は「現状認識」として、商品企画から設計、調達、生産、販売、販売後のサービスに至るまで一貫したバリューチェーンを持つことや、薄型・堅牢で快適なパソコンを開発するうえでのすべてのリソースを社内に持つこと。それに長年、世界中の企業に製品を提供してきた高品質を実現するノウハウなどは、現在も強みとして持っていると話した。

一方で縮小均衡を目指して事業の整理を続けた結果、製品ラインナップは大幅に縮小され事業領域は縮小。海外の販売基盤も極めて弱くなっている。これらによる販売台数の落ち込みは、単純な売り上げ減少による経営基盤の脆弱化だけでなく、部品調達力とコスト競争力の低下を招いている。

そこで、ハードウエア事業、サービス事業ともにシャープのスマート家電、スマートフォンと連携。シャープが持つデータセンターやオフィスソリューションなどのサービスプラットフォームを新生Dynabookの事業と統合し、8K映像エコシステムや5G技術、センサー技術などを組み合わせることで、経営効率と商品力を高めていくという。

同時に得意なモバイルパソコンやエッジコンピューティングデバイスだけでなく、サーバー、デスクトップパソコンなど、フルラインの製品を用意。さらには日米欧など成熟市場向けのプレミアム機、アジア市場攻略の戦略的な位置付けの製品どの開発を進めながらサービスメニューの国際化を図り、今年は18%の売り上げ海外事業比率を2020年までに42%に引き上げることで、出荷ボリュームを増やしていく計画という。

現在は中国・杭州のパートナー工場で生産されているパソコンだが、将来的に増産していく中では台湾・鴻海の生産拠点や部品調達力を活用していくアイデアもあるという。

3年後のIPOはどのような目的なのか

もっとも、こうした基本的な戦略部分は決して斬新というわけではない。

縮小均衡を続け、やっと2018年度下半期に1億円の利益を計上できたばかりの会社だ。シャープの事業ポートフォリオを組み合わせることで効率を高めたうえで、シャープの海外営業チャネルを活用するとしても、独自性を築けるところまで持ち込めるのだろうか?

石田会長は記者会見で、3年後のIPO(新規株式公開)にはどのような目的で資金調達しようとしているのか尋ねられ、「具体的な資金調達プランがあるわけではないが、3年後にIPOに耐えうるだけの企業価値を創出したいということ」とかわした。しかし、5~10年後を見据えるならば、5Gネットワーク社会の中において“コンピューティング”という部分を見直しつつ、扱う製品ジャンルも随時見直していくなど柔軟な運営が必要になっていくだろう。

とはいえ、それはまだ先のことだ。

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