日本企業は、なぜ「社員のお墓」を作るのか

「企業墓」に眠る高度経済成長の戦死者たち

なぜ企業は墓をつくるのか(写真:kenji / PIXTA)

長いこと本を読んでいると、性格が素直じゃなくなる。新しい本を手に取っても、「この手のテーマ、前も読んだことあるな、フン!」などとついつい思ってしまうのだ。すれっからしもいいところである。

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だがこの本には驚かされた。まさかこんな切り口があったとは! 『ルポ企業墓 高度経済成長の「戦死者」たち』は、文字通り企業が建立した「企業墓」をテーマにしたノンフィクションだ。

聖地として知られる高野山は、年間200万人もの観光客が押し寄せる一大観光地でもある。ここを訪れた人はみな奥之院を目指す。空海御廟に詣でるためだ。

御廟までの約2キロメートルの参道の両側には、織田信長や豊臣家といった名だたる戦国大名の墓所が林立していることで有名だが(ホント物凄い数ある。さながら戦国オールスターズの趣)、実はパナソニックやクボタなどの企業墓が多数集まるエリアでもある。

高野山という聖地に、インパクトのあるデザイン墓

金剛峰寺域内や周辺も含めると、高野山にはなんと140基もの企業墓があるという。その形態も実にユニークだ。アポロ11号を模した慰霊碑があるかと思えば(新明和工業)、巨大なカップ&ソーサー(UCC上島珈琲)がある。巨大なヤクルトもあれば福助人形だって鎮座している。著者は取材中、外国人観光客からしばしば「ここは誰のGRAVEなのか?」「こんなTOMBがなぜ高野山にあるのか?」と質問を浴びせられたというが、聖地にこのようなデザイン墓があることに彼らは一様に驚くらしい。

個人的にインパクト大だったのは、なんといっても「日本しろあり対策協会」の慰霊碑だ。「しろあり やすらかに ねむれ」の文字が刻まれた供養塔はいちど見たら忘れられないインパクトがある。会のホームページには「生をこの世に受けながら、人間生活と相容れないために失われゆく生命への憐憫と先覚者への感謝の象徴」とある。著者がイギリス人観光客に説明したら腹を抱えて笑われたそうだが、このように駆除対象の害虫と駆除した人間の双方を祀るのは、たしかに日本独特の感覚かもしれない。

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