食パン「乃が美」の躍進が止まらない仕掛け 大阪プロレスから転じた革命児の軌跡とは?

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②については、「まずは東京マーケットのさらなる開拓を進めていきます。そして一方で、世界に目を向けた動きも考えています。パンの本場は外国ですが、お寿司やお好み焼きのように、広く世界にメイド・イン・ジャパンの『くちどけ食パン』として受け入れられるのでは、と思っています」そして、まずは口の肥えている東南アジアにジャパンフードとして挑戦したい、とのことでした。

大阪プロレスポスター。中央には阪上社長(写真:大阪プロレス)

ほぼ1時間半ほどお話を伺いましたが、終始、阪上社長の熱い思いに圧倒されました。「昔、水を買うなんて考えられませんでした。今は普通にコンビニで売っています。それなら、高級食パンを買うのが普通になってもおかしくありません。要は、ホンモノであることが重要だと思うんです。100年歴史に残る日本一の食パンです。毎日食べてもらう、皆に愛される食パンを目指しています」

「パン・オブ・ザ・イヤー2016食パン部門金賞」受賞、「Yahoo!検索大賞2017食品部門賞」受賞など、ますます勢いが増す「乃が美」の高級生食パンですが、その原動力は、食い倒れ大阪で発祥した、という阪上社長の思いにあると思います。「関西人は、なにわ食文化への誇りをもっと持っていいと思います。ほんまもんはわれわれが作るんや、という気概が大切です」

今や月商10億円にまで成長した「乃が美」ですが、阪上社長のなにわ食文化への思いが続く限り、さらなる発展が期待できると思いました。

優れた社長は「縁」を大切にする

最後に、エピソードを1つ。

冒頭、忙しい中取材に応じてくれた、と書きましたが、別れ際、阪上社長から「竹原編集長には、パンを作る前の大阪プロレス時代から取材してもらって、大変お世話になりました。その縁を大切にしたかったので、お会いしたいと思ったのです」との嬉しい言葉をいただきました。

“縁を大切にする”は、筆者が長い取材経験の中で発見した優れた社長に共通する特性です。阪上社長は現在、ラジオ大阪で自らパーソナリティーを務める番組を持っていますが、その番組名も「乃が美 阪上雄司の縁モーニング!!」(毎週土曜日 朝8:15~8:30)となっています。まさに「縁」を大切にする阪上社長らしいネーミングだと思いました。

なにわの中小企業の社長との“ご縁”を大切に3年余り連載を続けてきましたが、今回を以って一区切りとさせていただきます。東洋経済オンラインの読者の皆様には、別の形でまたお会いできたら、と思っています。長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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