食パン「乃が美」の躍進が止まらない仕掛け 大阪プロレスから転じた革命児の軌跡とは?

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自分の店で従来から使う材料と違うと言うのです。調べてみると、納入業者が同じ価格でより高級な材料に変えていました。先方は好意でやったのですが、そのわずかな材料の違いが味を微妙に変化させていました。

早速材料をもとに戻すと、従来の食べ心地に戻り、ほっと胸を撫でおろしたそうです。阪上社長は「パンは生き物」と言いますが、まさにその言葉を実感させる出来事でした。

東京進出後の夢と大阪にかける想い

「乃が美」の出店政策は独特です。

11月15日にオープンした「乃が美」麻生十番店の外観(写真:乃が美)

まず立地ですが、その店舗の大半は、道路から中に入ったひっそりした裏路地に有ります。賃料が安いこともありますが、それよりも、本当に美味しいものには立地が悪くとも人が集まる、との信念からです。お店の隣には、原則、パン工場を隣接させます。何よりも「生(なま)であること」にこだわっています。

そして全国を制覇する最後に東京に出店する、という考え方もユニークです。「急速に拡大しているように見えますが、各県1店から2店を徐々に出していっています。ある意味、”出し惜しみ”している感じです。東京は確かに魅力的ですが、同業者が何店も出店していてもやっていける巨大マーケットです。満を持して最後に出店したいと思いました」。

商品コンセプトも巧みに構築されています。

老舗の和菓子屋のような紙袋を使用。贈り物、差し入れなどでも使える工夫です。「自分用で買うだけでなく、お友達にも贈ろう、と2本買ってもらえます」と阪上社長。量がはけるのです。北新地のバーでも、ママたちがお客の土産用に準備するとか。家に持って帰っても、飲んだ後には見えないのがミソです。意外な使い道です。そう考えると、864円というか価格設定も絶妙です。食パンとしては少し高めかもしれませんが、お届けものとしては決して高くはありません。手土産は意外と頭を悩ませますが、「手に入らない」そして「考えなくていい」ことから、接待用としても人気の逸品です。

ここで阪上社長に2つ聞きたいことがありました。

①大阪プロレスの経営も続けているが、その理由は何か? このまま続けるのか?

②東京進出の夢を果たしたが、その後の展開は何を考えているのか?

まず①については、「以前は、大阪プロレスの知名度で、乃が美の『高級生食パン』を宣伝してもらいました。今は、全国に出店した乃が美の知名度で大阪プロレスを全国区にしたいと考えています」とのこと。阪上社長には、おもろさと格闘技の融合である大阪プロレスこそ、なにわを代表するコンテンツだ、との思いがあります。

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