20代で「発達障害」と診断された男性の苦悩

空気が読めないので摩擦が絶えなかった

ひとつ不思議だったのは、ジュンイチさんが「空気が読めない」と言いながら、サービス残業には黙って従っていたことだ。ある会社では、サービス残業だけで毎月50時間を超えており、労基署からも指導が入るほどだったが、文句を言ったことはないという。

なぜ、残業代の支払いを求めなかったのかと尋ねると、「大学時代の友人から『残業代はないんですか、なんて、(会社に)そんな失礼なこと、聞くもんじゃないよ』と言われたんです」という。

ろくでもない“アドバイス”である。ただ、自分には一般常識が欠けていると思っているジュンイチさんにしてみると、こうして、周囲の忖度(そんたく)ぶりを見習うことは、摩擦を減らすための、彼なりの処世術でもあったろう。

その後、家族の勧めで医療機関を受診。そこで、アスペルガー症候群と診断され、就労は難しいと告げられた。10年ほど前から、障害年金と生活保護で暮らしている。

打ち明けられた生活保護の不正受給

ジュンイチさんに話を聞く中で、最も戸惑ったことは、生活保護の不正受給について、屈託なく打ち明けられたことだ。

生活保護の不正受給を指摘すると、あっさりと「確かに悪いことだったかもしれません」と言うジュンイチさん(編集部撮影)

生活保護の利用を考えたとき、ジュンイチさんには約200万円の貯金があった。貯金がある場合、生活保護を利用できないことは、あらかじめ調べて知っていたという。このため、半年間ほどかけて口座から少しずつお金を引き出し、残高がゼロになったころを見計らって受給を申請。受給が始まった後、その貯金を使い、数カ月にわたって趣味の海外旅行を楽しんだ、というのだ。相当に悪質な不正受給と言われても仕方ない。

私がそう指摘すると、「自分で稼いだお金を、どう使おうが自由じゃないですか」と反論された。重ねて制度の趣旨を説明し、何より、ジュンイチさんのせいで、本当に生活保護が必要な人が利用できなくなるおそれがあるのだと伝えると、あっさりと「そう言われると、確かに悪いことだったかもしれません」と言う。

生活保護の問題以外にも、ジュンイチさんと話をしていると、私とは考え方や受け止め方が違うと感じることがたびたびあった。

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