20代で「発達障害」と診断された男性の苦悩

空気が読めないので摩擦が絶えなかった

ジュンイチさんは、小学生の頃から激しいいじめを受け続けたという。きっかけは、運動会のクラス対抗リレー。当時の担任教師は、走ることが苦手だったジュンイチさんを教壇の前に立たせ、「うちのクラスが遅いのは、お前のせいだ」と吊るし上げた。放課後の自主練習に参加しなかったことも、「迷惑をかけているのに、なぜ協力しない」と叱責された。

しかし、一連の出来事は、ジュンイチさんに言わせるとこうなる。「練習は強制ではないと言うから参加しなかったんです。なぜかって? だって、走るのは嫌いでしたから」。

以後、一部のクラスメートからこぶしで殴られたり、足蹴にされたりするようになった。「通り過ぎたときに筆箱を落とした」「命令したのに、坊主にしてこなかった」など、理由はあってないようなものだ。さらに中学生になると、金銭を脅し取られるようになった。

「(当時は)地獄でした。学校を飛び出して独りで泣いたこともあります。『学校に行くのをやめたら、俺の負けだ』という思いだけで、登校していました」

ジュンイチさんは今も、髪の毛をつかまれて廊下や教室の壁に押し付けられたときの記憶がフラッシュバックする。そんなときは、心の中がどす黒い怒りでいっぱいになるという。

一方で、体育以外の成績はつねにトップクラスだった。教師やいじめた同級生たちを見返したいとの思いから猛勉強し、大学は有名国立大学へと進んだ。

スーツに真っ赤な靴下で出勤

しかし、引く手あまたのはずの就職活動で、再びつまずくことになる。第1希望ではない会社の面接で、志望動機を聞かれるたび「よくわかりません」などと答えてしまうからだ。「こういうときは、ウソでも、何かしら理由を考えて答えなきゃいけないんですね」とジュンイチさん。後になってそんな“常識”を知ったが、すでに手遅れだった。結果的に、唯一採用されたのは、希望からはほど遠い精密機器メーカーだった。

働き始めてからも、「空気が読めない」ことによる摩擦は絶えなかった。

スーツに真っ赤な靴下を合わせて出勤したり、先輩社員らが残業している中、真っ先に帰宅したり、専用ソフトを使った自宅研修を命じられたのに、従わなかったり――。

ささいな行き違いもあれば、会社側の指示が法令違反であることもあった。指摘を受けて、その都度改めたこともある。ただ、気が付くと、先輩や上司から「お前みたいなやつは、いらねぇ」と言われているのだという。結局、人間関係がうまくいかず、1年から数年で退職と転職を繰り返した。

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