中国が抱えているリスクについては過去の連載でも述べていますが、状況整理のために、もう一度ここでまとめておきましょう。
中国に関するリスクを列挙すると、次の通りです。
①中国政府主導による大規模な反日デモのリスク
②労働ストライキの頻発と、それに伴う労働賃金の高騰リスク
③環境問題が悪化することによって、環境対応コストの負担を迫られるリスク
④あまりの格差拡大に我慢ができなくなった農民や民衆による大暴動のリスク
⑤ シャドーバンキング問題に見られる不動産バブル崩壊のリスク
アメリカ・プラスワンの時代に
これだけのリスク要因を抱えている中国に、これからも巨額の投資を行なうのは、あまりにも危険であるといわざるをえません。したがって、これからは「チャイナ・プラスワン」ではなく、「アメリカ・プラスワン」を目指すべきなのではないかと強く思うのです。
アメリカではシェール革命によって、エネルギーコストが劇的に下がっています。おまけに、世界最大の消費国でもあります。つまりアメリカは生産拠点として、十分な魅力を持っているのです。したがって、アメリカをメインの生産拠点とするとともに、親日的な東南アジアのどこかに、プラスワンの生産拠点を持っていくというのが、「アメリカ・プラスワン」の考え方です。
日本企業の多くは、中国の人口13億人という点に目がくらみ、この巨大市場の恩恵をできる限り受けたいと考えているようですが、前述のように、中国にはさまざまなリスクがあります。反日デモが盛り上がったとき、日本から進出しているスーパーマーケット、デパートなどは軒並み売上がダウンしました。それだけならまだしも、デモの最中、店舗が壊されるといった実害も受けています。
確かに人口13億人は魅力的ですが、反日デモが起こるような国民感情が変化しない限り、中国が日本にとって魅力的なマーケットになり続けることはないでしょう。
いや、そもそも、反日デモは、格差拡大で不満を高める民衆にガス抜きをさせるために、中国共産党や政府が主導した可能性さえあるのです。共産党や政府は現在の体制を維持するために、今後も民衆の不満が自分たちに向かうたびに、批判の対象をすり替えようとするでしょう。その間、中国に投資を続けることが、日本企業にとって本当にメリットのあることなのかを考えると、やはりかなり疑問を感じざるをえません。
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