消えた”383改革案”、中国「三中全会」の深層 踏み込み不足に終わった経済改革
今後10年にわたって中国の舵取りを担う習近平政権。最大のミッションは、経済格差や官僚の腐敗など、高度成長の過程で蓄積された矛盾を解決するための改革実行だ。
その青写真を世に問う中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が、11月9日~12日に行われた。12日夜にコミュニケ(声明文)が公表されたが、その内容は経済政策から文化、環境、軍事にいたるまでてんこ盛り。多方面にわたる改革の司令塔として、党内に「全面改革指導チーム」が新設された。
しかし、注目度が高かった経済政策では抽象論が多く、踏みこみ不足の印象を与えた。株式市場にも失望を与え、翌13日の上海総合株価指数も下落した。
盛り込まれなかった「改革案」
市場の失望を買ったとはいえ、事前に改革の青写真とされるものが流布していたことで、期待値が高まっていたという事情もある。会議に先立ち、政府系シンクタンクの国務院発展研究センターは改革メニューの提案書を公表。「三位一体の改革路線」と「八つの重点領域」における「三つの改革」という内容から「383改革方案」として知られるようになった。
その目玉は行政改革、国有企業改革、社会保障制度改革、財政改革などの経済改革メニューだ。起草者に、習国家主席の経済ブレーンとして知られる劉鶴・国家発展改革委員会副主任が、提案書作成のメンバーに入っていたこともあり、実現の可能性がかなり高いと期待する向きもあった。
提案書の核になるテーマは、政府と市場の関係の見直しである。李克強首相がかねて強調してきた許認可権の大幅な縮小が改めて打ち出され、市場原理で経済を効率化する方針が示された。
中でも注目されたのが国有企業改革だ。中国では「国進民退」といわれる、国有企業による民営企業圧迫がまかり通る状況への反発が強い。提案書では、鉄道、石油、電力、通信、金融などの民間開放や業界再編を提唱。シンガポールの政府系投資機関であるテマセク・ホールディングスを参考にした、国有資産の管理手法の見直しなども盛り込まれた。
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