チャイナ・プラスワンは、もう古い! これからは「アメリカ・プラスワン」の時代

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それに対して、日本企業にとってのアメリカは最大の消費地として、依然として高い魅力を持っています。

現在の貿易統計では、アメリカが最終消費地であることが非常に見えにくくなっています。OECDが付加価値ベースで2009年の貿易統計を計算し直したところ、日本が大幅な貿易黒字を維持しているのはアメリカだけであって、中国や韓国に対しては若干の赤字になっていることがわかりました。

日本にとって最も魅力的なのは、やっぱりアメリカ

少し詳しく見てみましょう。たとえば、日本から中国に70ドル分の部品を輸出するとします。その部品を中国で組み立てて、アメリカに100ドルで輸出したら、どうなるのでしょうか。

通常の貿易統計では、これは「日本が中国へ70ドルの輸出を行い、中国がアメリカへ100ドルの輸出をした」ということになります。
 しかし、最終消費地はアメリカですので、本当の付加価値で見ると、「日本からアメリカに70ドル輸出、中国からアメリカに30ドル輸出」というのが正しい統計になるわけです。すると、日本が大幅な貿易黒字を保っているのはアメリカだけであって、中国に対しても韓国に対しても若干の赤字、もしくはプラスマイナスゼロ近辺になるのです。

この実態は、2010年以降の貿易統計を計算し直しても変わらないでしょう。

つまり、日本にとって最も魅力的な最終消費地は、中国でも韓国でもなく、明らかにアメリカであり、そのような構造になっているからこそ、アメリカの景気が回復すると、日本の景気も浮上するのです。

したがって、これからの日本企業の戦略としては、まずアメリカ南部に工場を置いて、日本にとって最大の最終消費地であるメリットを活かすと同時に、プラスワンは中国の巨大マーケットの恩恵をある程度享受できるよう、中国に近い東南アジアのどこかに生産拠点を設け、そこから輸出を行なう「アメリカプラスワン」の発想が、日本企業にとって重要な意味を持ってくるはずです。すでに、中国国内で生産するメリットは失われているのです。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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