しかも、「資本をx%以上に維持せよ」などといったコベナンツ(財務制限条項)がついていないローンも増えている。銀行間の貸出競争が激化しているためだ。「コベナンツ・ライト」と呼ばれる、これらの甘い融資は、2008年頃にはほとんど見られなかったが、今や欧米のローン全体の75%を占めるまでに膨張した。財務制限条項がついていないと企業の倒産を察知するのが遅れかねない。前FRB議長のジャネット・イエレン氏も、先月の講演でコベナンツ・ライトの増加に懸念を示した。
さらに状況を複雑にしているのが、これらの企業融資を束ねたCLO(Collateralized Loan Obligation、ローン担保証券)の存在だ。これらの商品が世界中の投資家に販売されている。現在、CLOの残高は昨年から20%増の5400億ドル(61兆円)に達している。格付会社ムーディーズは需要の増加にうれしい悲鳴で、格付けをつける作業に以前より1カ月ほど長く時間がかかるようになっているという。
人気の背景には、CLOが変動金利であるため、金利上昇局面では固定金利の社債よりも投資しやすいこともある。運用会社に対する規制も緩和されつつあり、市場はまだ拡大が続きそうだ 。
邦銀もリスクテイクを拡大、中には倍増した銀行も
これらの人気市場を運用難の邦銀が放っておくはずがない。邦銀の海外クレジット投資額は近年増加を続けている。国債などの外国債投資を当局からウォッチされていることも、高リスクのクレジット投資の増加に拍車をかけた。
日銀の金融システムレポートによると、日本の金融機関の海外企業などに対する投融資残高は2018年6月末で6750億ドル(76兆円)。増加率は前年比8%程度とさほどでもないが、問題は、銀行ごとに拡大幅にばらつきがある点だ。40%の金融機関が前年比で25%以上伸ばしており、そのうち12%の金融機関は一気に倍増させている。
もう一つ、邦銀の運用で気になる動きが非上場投資信託への投資拡大である。個人の場合、投信は少額の資金でも分散投資ができるなどの利点があるが、大きな投資ができる銀行なら直接投資をすればいいように思える。ところが、銀行の投信保有残高は、2013年4月の異次元緩和の開始以来、4倍に膨張している。
背景には、“会計上の扱い”の問題がある。銀行が非上場投信を解約して利益を出した場合、有価証券売却益ではなく、貸出や債券の利息と同じ「資金利益」に含まれる。投資の中身は問わない。このため、投信を解約することで、一見、本業の利益が伸びているように装うことができる。
例えば、投信解約益の開示がある北越銀行では、2016年3月期に資金利益が13億円増えたとしていたが、そのうち、投信の解約益の増加が15億円だったとしている。つまり、資金利益は増加しているように見えたが、実は預貸など本業の収益は減少していたというわけだ。このように内訳が開示されていれば実態がわかるが、そうでないと本業の利ザヤの儲けなのか、単発の売買益なのかがわからない。
また、外債などに直接投資するよりも、投信の方がリスクが見えにくくなる。性悪説に立てば、投信に投資すれば「どこの債券が増加している?」「年限は?」などといった市場関係者からの突っ込みを免れることができる。
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