338ページにわたるスルガ銀行の第三者委員会報告書は、業界関係者を震撼させた。「恫喝」という言葉が20回も登場し、「家族皆殺し」など信じがたい証言が並ぶ、異例の内容だった。
スルガ銀行は不動産業界では知らない人はいない存在である。収益物件にかかわる融資が柔軟であるとされ、不動産の転売業者、いわゆる“三為(さんため)業者”も頼りにしていた。
不動産業界だけではない。アナリスト業界でも、突出した存在だった。決算説明会でも、さまざまな識者が動画で未来の金融を語り独特の雰囲気を醸し出していた。高成長を背景に、トップのプレゼンテーションも、自信に満ち溢れたものだった。しかし、説明資料には、他行のような詳細な収益内容の説明はなかった。
外部の高評価がスルガ銀行を特別な存在にした
スルガは、株式投資家にとっても特別な存在だった。
スルガの株価が上昇したきっかけは、株式アナリストの評価だ。ある日本人アナリストは、1999年に、知名度もまだ低く中堅地銀にすぎないスルガを買い推奨したことで高い評価を得た。
先駆的なモデル融資やITの活用など、確かに当時のスルガの企画力は優れていた。地銀で唯一、ゆうちょ銀行と住宅ローンで提携したのもスルガだ。ハーバード大学教授で競争戦略の権威であるマイケル・ポーター教授は、スルガ銀行のイノベーションや収益性を買って、2003年に「ポーター賞」を与えた。
こうした評判を反映して、株価純資産倍率(PBR)がピークでは3倍に近づくなど、長らく地銀の中でトップを独走していた。ところが、不正が報じられた昨年後半以降、株価はつるべ落としとなり、足元では邦銀平均を下回る0.3倍となっている。
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