東大男子が経験する、外見による選別? 男だって、容姿で差別されている

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身分が消滅し、階層が平準化し、恋愛結婚が可能になって初めて、外見は婚姻市場における重要なファクターになってくるのです。日本で恋愛結婚がお見合い結婚の数を上回るのは1960年代半ば。今では結婚の9割以上が恋愛結婚です。したがって、そのプロセスで外見が婚姻市場で意味を持つようになるわけですが、そこではなぜ女性の外見のほうが男性より注目されるのでしょうか? 「男性のほうが相手に外見を求めるから」と言う人がいますが、これは何の説明にもならないある種のトートロジー(同義反復)です。

おそらく旧来の性役割規範(男は仕事、女は家庭)に基づけば、男性にはいまだに経済力が求められているために、外見が婚姻市場の中で持つ優先順位が低いのでしょう。女性の場合の家事能力は、誰でもやっているうちにある程度身に付けられるために、外見の順位が高くなると考えられます。

逆に言うと、将来の経済力がほぼ同じであると考えられる空間では、男性も明らかに外見による選別の圧力を受けることになります。「だってそうでしょ?」と400人ほどの大教室で学生さんたちに問いかけると、特に男子学生がうつむいて苦笑していました。

男女比が5:1になってしまっている(そのこと自体は深刻な問題ですが)勤務先の大学では、当然、女性の側から見て買い手市場になり、そこには女性側からの外見による男性の選別も当然、働きます。「イカトウ(いかにも東大生)」というのが、ファッションのださい男子学生をからかう学内用語として流通しているのも、そんなことと関係しているのでしょう。

じゃあそもそも、外見による選別にいったい何の意味があるのでしょう? 基本的には、多くの人の平均値に近い外見の人が好まれることが知られているのですが、これこそまさにトートロジーで、「外見に恵まれた人の子どもは外見に恵まれる可能性が高いから」という、身もふたもない説明くらいしかできません。

かつては外見に恵まれず、コミュニケーション能力に長けていない男性たちも、お見合いで結婚できたのに、それがなくなってきたことが、晩婚化や生涯未婚率の上昇につながっているのかもしれません。

瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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