アメリカ経済が急失速するリスクは小さい

悲観的過ぎた株式市場と冷静な債券市場

当時のアメリカの経済指標を確認すると、原油安や中国・新興国経済の停滞を背景に、製造業の活動にブレーキがかかりGDP成長率は、2015年10-12月から年率+1.0%まで低下した。だが、これはほぼ半年の期間限定の減速だった。その後、アメリカ経済は持ち堪え2016年半ばから経済成長率2%前後まで持ち直し、その過程でアメリカ株は2016年春先から上昇基調に転じた。

2018年の現状をみると、アメリカの製造業の生産活動は堅調だが、トランプ政権が進める関税引き上げ政策によって、今後貿易活動に携わるアメリカの製造業には一定程度影響が及びうる。2015年後半から半年程度続いた、主に製造業によって引き起こされた景気減速が、2018年末から2019年前半にかけて再び起こることを、同国の株式市場はある程度織り込みつつあるとみられる。

なぜアメリカ経済が急失速する可能性は低いのか

もっとも、筆者は短期的にみればまだ乱高下が続く可能性はあるが、やや長い目でみれば悲観的になる必要はないとみている。

アメリカ経済にとって、中国への関税引き上げによって製造業の生産活動の停滞などがあったとしても、2015~16年の時もそうであったように、製造業中心の景気減速が半年以上にわたり、アメリカの経済成長を大きく押し下げるとは考えにくい。

10月22日のコラム「アメリカ株が日本株よりも儲かりそうな理由」でも述べたが、アメリカ経済が、2019年にかけて経済の急失速あるいは景気後退に向かう可能性は低い。繰り返しになるが理由は主に2つだ。①3%程度の長期金利はアメリカの景気後退につながる可能性は低い、②関税引き上げのアメリカ経済全体への影響は限定的、との見方によるものだ。

また、10月に入ってから株式市場が大幅下落となる一方で、アメリカの債券市場ではわずかな金利低下しかみられていない。為替市場でも、ドル円は1ドル=110円台前半でレンジの変化はみられない。なお、2015年後半から2016年初旬のアメリカ株の下落局面では、アメリカ10年金利は2.5%前後から1.6%前後まで低下しており、金融市場全般でアメリカの景気後退リスクが意識されていた(当時は、債券市場もアメリカ経済に対して行き過ぎた悲観に陥っていた)。

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