10年引きこもった30歳がバーを開業したワケ 「他人と関わるのが怖い」からの変化

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――当時のことは私もよく覚えています。「この1年間、両親と祖母以外の人と話したことがないんですが」と連絡してきましたね。

押井守さんに僕が聞きたかったのは「このまま他人と関わらないで生きてもいいでしょうか?」ということでした。押井守さんに、いまひきこもっている自分のライフスタイルの是非を聞きたかったんです。

押井さんは「いいんじゃないかな、俺もひきこもっていたけど世の中がおもしろくなって外に出たし」という趣旨の発言をされていました。

取材よりも楽しかったのは

じつはその取材よりも僕にとって大きかったのが、取材後に参加した飲み会でした。

取材が終わって、しばらくして子ども若者編集会議へ行き、会議後に20代以上の人たちと飲みに行きました。それがホントに楽しくて(笑)。

「他人と関わらないで生きていきたい」と、わざわざ押井さんに聞いたのに、その直後から人と関わる楽しさを知りました(笑)。もちろん「働いていない人も存在していいんだ」と肌で感じられたことも大きいことでした。

その後は名古屋のひきこもり当事者会や『不登校新聞』に顔を出しながら、気がつけば10年ほど時間が経ちました。

この間、自動車免許を取ろうとして教官が怖くて泣いてしまったり、アルバイトの面接へ行ったら「私も不登校経験者だったので」という理由で面接官から小言をもらったうえで不合格通知をいただいたり、かっこいいエピソードはありません(笑)。

ただ「無理をした」という感覚もありません。当事者会に出るうちに知り合いの幅が広がり、飲みに行く人が当事者や経験者以外にも増えていきました。お酒は年々と好きになって飲むだけでなくお酒にもくわしくなり、自分が主宰する飲み会を開くことも増えました。

そうしたなかで、以前は「他人は怖い」と思っていたんですが、「怖い他人はむしろ少ない」ということも実感しました。そういう実感が何よりも大きなものでした。

「働いていない人も存在していいんだ」と肌で感じられたことも大きかった(写真:不登校新聞)
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