10年引きこもった30歳がバーを開業したワケ

「他人と関わるのが怖い」からの変化

――ふつうに考えれば、人間関係が殺伐としたグループから外れたほうがいいと思うのですが、むしろ絶望感を感じたと?

そうなんです。当時は、あのグループにいることが世界のすべてだとさえ思っていたからだと思います。不登校をしてから10年近くは当時の人間関係を夢で思い出すこともありました。

――ひきこもっていた10年間は、学校時代の人間関係が記憶や夢のなかでリフレインされるため「他人が怖い」と強く感じていた。そんな感じでしょうか?

そうかもしれません。ただし、本当にきつかったときの記憶は覚えていないというか、あまり考えられる状況じゃなかったのかもしれません。

人間関係以外でも、小学校時代の先生との関係や部活がきつかったことなど、いろんなことがありました。でも、その思いをどうしていいかわからなかったです。

不安から家で暴れて壁に穴をあけたり、無理に働こうとして新聞配達の仕事を2週間やって、よけいに働く自信を失ったり(笑)。

結果的には外部との関係をいっさい遮断して、家族以外とは話さないという期間を何年か続けたことで安定してきました。

周囲から見たら「ひきこもり」かもしれないけれど

――「安定してきた」というのはどういう状況なのでしょうか?

お店では自家栽培の野菜を使って料理を提供(写真:不登校新聞)

「この先、自分はどうなるんだろう」という将来に対して焦りや不安はあるのですが、精神的に追い詰められるところまではいかない、という感じです。

昼夜逆転をしていたり、オンラインゲームも累計で6000時間もやったりと、周囲から見たら不安な「ひきこもり」かもしれません。それでも、学校へ行けなくなった直前直後とは比べ物にならないほど精神的には安定したな、と。

そういうなかで「このまま人と関わらないで生きていこう」と決めていた時期もありました。その時期に1年間、株の勉強をして、株取引も始めて「これで食べていけたらな」と思ったこともありました。リーマンショックで利益を全部、スッて辞めましたが(笑)。

そのあと、2009年に『不登校新聞』の取材に参加しました。アニメ映画『攻殻機動隊』や『スカイ・クロラ』などの監督・押井守さんの取材です。

母から取材同行者を探していると聞いたとき「こんなチャンスは二度とない」と思って新聞社に連絡しました。

次ページ押井守さんに聞きたかったこと
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