なぜ平壌で買える?「ポッカ」の不都合な真実 海外子会社が販売ルートを開拓していた
実は、ポッカの缶飲料の北朝鮮への流入については、これまでも報じられてきた。前述の「驚愕実態!対北朝鮮制裁は『ザル状態』だった」でも報じたように、ポッカシンガポールがシンガポールで製造した缶コーヒーは、シンガポールに拠点を置く「OCNシンガポール」(以下、OCN)と、その事業を引き継いだTスペシャリストが販売業者となり、北朝鮮に輸出していたことがわかっている。
OCNとTスペシャリストは北朝鮮の事実上のフロント貿易企業と化していた。そして、2018年3月に国連の安全保障理事会に提出された最終報告書では、国連の制裁決議に違反し、北朝鮮にぜいたく品を輸出したなどとして追及された。さらに、その両社の取締役であるシンガポール人のNg Kheng Wah氏は2018年7月、国連の制裁破りに関連した161の罪で起訴されている。
「ポッカインターナショナル」で起きた問題
また、シンガポールのストレーツ・タイムズ紙の2018年9月28日付の電子版記事によると、ポッカシンガポールの子会社で国際販売を担うポッカインターナショナルのアラン・オングCEOは同月、内部監査の結果、職務停止の処分を受けたという。この処分が、北朝鮮との取引に関連したものかどうかはわかっていない。同氏の妻で女優のビビアン・レイ氏が長年、ポッカシンガポールの広告塔の仕事を契約してきたことから、縁故主義的な不正会計の疑惑を指摘するシンガポールメディアの報道もある。
オングCEOは2017年にNK Newsの取材に対し、2012年にOCNとの取引を止め、北朝鮮向けの輸出をストップしたが、それ以降もTスペシャリストとの取引を継続したことを認めている。そして、そのTスペシャリストがポッカ製品を北朝鮮ではなく、中国に輸出していたと理解していたと述べた。
いずれにせよ、こうしたポッカが関連した対北制裁破りのニュースが2017年以降、特に相次ぐ中、なぜ今もポッカの缶飲料は北朝鮮に流入しているのか。ポッカの販売網やガバナンスはいったいどうなっているのか。特にシンガポールは2017年11月から対北全面禁輸の制裁措置をとっているにもかかわらずである。
実は前述のシンガポールで製造され、平壌で売られていたマンゴージュースの缶には、「ディストリビューター」(販売業者)の名前としてアラブ首長国連邦(UAE)のナショナル・トレーディング・アンド・デベロッピング・エスタブリッシュメント(NTDE)の名前が記されていた。
これについて、ポッカ日本本社の広報担当者は筆者の取材に対し、このマンゴジュースが「UAE向けの商品」と認めたうえで、UAE向けのポッカの缶飲料が間接的に北朝鮮に輸出されていた事実を認めた。
そのうえで、ポッカシンガポールのポリシーとしては、「北朝鮮への直接の輸出は行わない。間接的に北朝鮮に流れることがわかれば、その取引も行わない」を掲げていることを強調。さらに、「現地ディストリビューターとの取り決めで彼らの販売エリアは限定されています。販売エリア以外への販売を行わないようディストリビューターに対して再度申し入れます」と述べ、NTDEに対し、北朝鮮にポッカ製品が輸出されないよう、強く求める考えを示した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら