JAL最終処理 始まった秒読み
経営再建中の日本航空が金融支援の要請を行っていることが明らかになった。収益力の改善はもとより、保有機材の含み損や長年の労務問題など、病根は切除されるのか。(『週刊東洋経済』6月9日号より)
日本航空(JAL)をめぐる動きが緊迫の度を増している。最近、同社の実務担当者はひそかにみずほコーポレート銀行をはじめとする民間の主力3行に足を運んだ。その場で明かしたのは、資本増強策への支援要請だった。内容は実質的な債務株式化で、金額は2000億~4000億円とされる。要は巨額の“借金棒引き”を願い出たわけだ。
有利子負債が1兆円を超す日本航空に対して、金融機関の姿勢はじわじわと厳しくなっている。金融庁による検査の結果、主力行の一部は日本航空の債務者区分を「破綻懸念先」に引き下げた。三井住友と三菱東京UFJの両行は2006年度決算で、日本航空向けをリスク管理債権に分類し、所定の引き当てを済ませたとみられる。同様の動きはみずほコーポレート銀に広がる可能性が高い。
一方、主力行で融資金額が最大の日本政策投資銀行(政投銀)は、水面下で債権保全に動き出している。航空機には不動産と同じように、抵当権設定状況を記載した航空機登録原簿というものがある。それによると、3月19日付で政投銀は極度額4000億円もの根抵当権設定について仮登録を行っているのだ。続く同27日付で、やはり政府系金融機関の国際協力銀行も極度額3000億円で仮登録している。
中下位行でも不穏な動きがあった。07年3月末の日本航空の借入先リストに、見慣れない横文字が登場したのだ。名称は「シャイニングパートナーズ」。米投資銀行ゴールドマン・サックスの関連会社とみられ、大手邦銀から債権を買い取ったようだ。不振企業向け債権を外資が安く買いたたかなかったはずはない。
日本航空は3月28日付で主力4行との間で595億円の融資契約を締結したと発表し、信用不安説の火消しに躍起だ。しかし、実態は既存融資の「ロールオーバー」であり「ニューマネー」ではない。通例、銀行は破綻懸念先債権の無担保部分に対して約8割の引当金を積む。その後は引き当ての範囲内で金融支援を行い、「正常先」への格上げを狙うことが多い。今回の支援要請もそうした流れの中で行われたものと見てよい。ある主力行は「要請の背後には政投銀がいると感じた」という。