JAL最終処理 始まった秒読み
債務処理方法めぐり主力行の思惑が交錯
冒頭の支援要請が今後すんなり通るかは予断を許さない。主力行の足並みは必ずしもそろってはいない。債務株式化に理解を示すのは、みずほコーポレート。三井住友では3月に協調融資を決めた矢先の要請だけに、戸惑いを感じているようだ。 政投銀はどうか。同行の融資残高は1990年代まで1000億円にも満たなかった。それが01年の同時多発テロ後の緊急融資で短期間に急増。「メインバンクは旧日本興業(現みずほ)と旧三菱(現三菱UFJ)」というのが政投銀の基本認識だ。しかし、お家の事情が変わった。政投銀は来年10月に株式会社化を控えており、それに先立って今秋に金融庁の検査が入る見通しだ。問題を早期解決したい動機は十二分にある。ただ、過去に同行が大口案件の抜本処理を主導した実績はない。
債務株式化が方法として適切かという問題もある。航空機材の含み損を解決するには、特別利益が計上できる債務免除のほうがより抜本的だ。ただし、主力行の中には「過剰支援になる」と、損失額が大きい債権放棄に警戒感を示す向きもある。
日本航空が長年抱える労務問題を考えれば、さらに踏み込んだ処理策が必要との見方もある。65年に経営側の介入で第一組合(日本航空労働組合)が分裂して以来、組合対策は極めて難しい問題となった。高水準とされる人件費の遠因でもある。
御巣鷹山事故後の85年末、労務対策の手腕を買われ、伊藤淳二・鐘紡会長(当時)が政府主導で送り込まれたが、1年余りで正常化の取り組みが頓挫したという暗い過去もある。先ごろ、一部管理職らが社員の個人情報を主流派のJAL労働組合に漏洩していた不祥事が発覚するなど、同社の労使関係は“伏魔殿”だ。
「問題解決のため法的整理も選択肢の一つ」。個人的見解にすぎないが、政府関係者の一人はそう話す。「ナショナルフラッグ」とはいえ、完全民営化された日本航空の経営問題に対して「政治」は今のところ距離を置く。が、主力行の足並みが乱れたとき、最終処理に向け、政治問題化する可能性は否定できない。
(書き手:高橋篤史、山田徹也)
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