「ワークマン」がオシャレになれた本当の理由 初出店のカジュアルウエア店舗は出足好調

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ワークマンプラスの店内は、通常のアウトドア店と遜色ない内装だ(撮影:大澤 誠)

前期末時点でのワークマンの現預金額は381億円。自己資本比率は81%と、資金は潤沢だ。これまでも既存店のレイアウトや壁の色を変えるなどして、魅力向上に取り組んできているが、今後は売り場をより見栄えよくして、既存店でも新たな顧客獲得に力を入れていく。既存店にワークマンプラスを併設したり、あるいは業態転換を行うといった構想も浮上している。

さらにネット販売もカギを握る。ワークマンでは全商品をオンライン販売をしているが、売り上げに占めるネット販売比率は1%弱にすぎない。ワークマンプラスのような取り組みから知名度が向上し、これまで購入していなかった人がネットで買うようになれば、まだまだ上を目指す余地はありそうだ。

「脱作業服」は目指していない

足元の取り組みだけ見ていると、あたかも脱作業服を目指しているように映るかもしれない。が、実際はその逆だ。同社のコアはあくまでも安価で手に入る作業服。採算度外視で都心に進出して値上げしたり、カジュアル路線に舵を切りすぎることはいっさい考えていない。同社はフランチャイズ主体のため、大胆な路線変更は既存の加盟店に悪影響を与えかねないからだ。

ワークマンの栗山清治社長は、あくまでコアは安価に手に入る作業服だと主張する(撮影:田所千代美)

圧倒的な使い勝手のよさを低価格で主要顧客を維持しながら、その延長で新たな分野に切り込んでいく。だからこそ、新商品を開発するにも「ワークマンがあるから、気楽に、失敗しても大丈夫という気持ちで取り組んでもらっている」(栗山社長)。その安心感と自由さが、ひるがえって新しいアイデアを生んでいる。

ここへきて、業界では期待を込めて「ポストユニクロ」とも呼ばれ始めた。「さすがにユニクロとは1店舗当たりの規模が全然違う。だけど、製品を見ると、そういう意識をしてくれる人が増えているというのはいい刺激になる」と栗山社長は言う。「ただしうちでいちばん売れているのはカーゴパンツ。ユニクロにはそういう商品はあまりない。だから、そういう違いをもっと全面に出していけたらいい」。

低価格の高機能ウエア市場は、今のところ手薄かもしれないが、大手も含めて、今後、他社が強化・参入してくるのは時間の問題だろう。そのときに、本来の顧客や強みを見失わずに、コア事業に集中できるか。成長市場に突っ込むときこそ、ワークマンの真価が問われる。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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