乳製品不足で「社員90人商社」が活躍するワケ ラクト・ジャパン、輸入量トップの秘訣

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部門間の人材のローテーションはほとんどない。専門性が高く担当者の交代なども少ないため、契約先農家からの信用を得やすいという。

「これまでは生乳が足りなくなったら活躍して、余ったらおとなしくしていてほしいというのが、業界の中での立ち位置だった」(三浦社長)。だがここ数年は「意識も業容も追いついて行くのが精いっぱい」(同)という状況だ。この数年は新卒を含め毎年10人以上を採用。本社も、10年間で2回移転するなど業容の拡大が続く。

東南アジアに足掛かり作る

2018年11月期の業績は売上高1100億円、経常利益は26億円といずれも過去最高を見込む。株価も堅調だ。直近では2015年9月の上場時からおよそ4倍の水準で推移する。

乳原料は品質管理が難しいうえ、輸入が制限されることも多く、取り扱いには専門性が要求される(写真:ラクト・ジャパン)

今後は、国内に加えて東南アジアにも経営資源を注ぐ。気温が高い地域では生乳は生産できないが、所得水準が高まるにつれて需要が伸びると見込まれるからだ。2017年にタイで工場を稼働。調達、加工を担ってメーカーとして新興市場の需要を開拓する構えだ。

国内外で存在感を高める同社だが、調達面では課題も出ている。台風の目になるのは中国だ。乳製品需要が増え、資金力を持った競合企業が増えているという。また、業容の拡大が続くだけに「人材の確保、教育がいちばんの課題」(三浦社長)でもある。

国内で乳製品の需給ギャップ拡大という追い風をどこまで生かせるか。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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