乳製品不足で「社員90人商社」が活躍するワケ ラクト・ジャパン、輸入量トップの秘訣

拡大
縮小

特にチーズでは躍進が続き、直近では輸入品のシェアは20%近い。2016年度までの10年間でチーズの輸入・消費量は20%伸びた一方で、同社の取扱量は3倍にまで拡大している。

輸入では規模の大きい総合商社と競合する中、同社がここまで拡大できたのはなぜか。三浦元久社長は「ほかの商社と違ったのは、調達先の豊富さ」を強調する。

契機になったのは2008年のリーマンショックだ。世界経済が混乱する中で、乳製品の相場も乱高下。乳業メーカーの多くが調達地を豪州やニュージーランドに限っていたため、相場の影響をモロに受けた。

「全方位外交」が生きる

調達地の分散が必要になる中、存在感を高めたのがラクト・ジャパンだった。同社は調達・販売先で資本関係の制約が薄く、「全方位外交を貫いてきた」(三浦社長)。調達先はオセアニア地域に加えて北欧やカナダ、南米などの25カ国に及び、各国における最大規模の酪農家を中心に250に広がっていた。調達先の多さは安定供給や価格面で有利に働き、メーカーからの引き合いが一気に強まった。

「この10年の乳製品の需給ギャップの拡大は想定以上だった」(三浦社長)。国産にこだわっていたメーカーも、輸入品を使わざるをえない状況が続いている。

同社は社員数が90人弱と小規模ながら、平均給与は850万円を超える高水準。東洋経済が7月に集計した全国の推定生涯給料ランキングでは、上場企業約3200社のうち63位に入った。三浦社長は「競合になる総合商社に比べて知名度で劣る分、彼らと対抗するためにも社員には待遇で報いている」と話す。

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