再び中央大広間に戻り、その裏側にある展示室に入ると、ステンドグラスで美しく装飾されている空間に、明治天皇の愛馬「金華山号」の剥製と骨格見本が展示されている。非常に賢い馬であったという金華山号だが、その姿を目の前にすると、明治天皇という存在が実感できるようだ。
この絵画館では戦前まで、現在の正面入口の階下にあたる1階から入場し、玄関で土足から“わら草履”のような室内履きに履き替えて観覧していた。泥道も多かった当時ならではのシステムなのだろう。
その玄関に行ってみると、ここでも階段や壁面に美しい大理石が見られる。階段には山口県産の「薄雲(うすぐも)」という上品なグレー色の大理石が用いられていて、この建物内の石材のバラエティにますます興味が湧いてくる。そして建物の外壁に用いられているのは、岡山県産の花崗岩「万成石(まんなりいし)」。薄いピンク色が特徴であるため「桜御影」とも言われる。
建物が大きく見えるよう並木の高さを調整
つまり、この聖徳記念絵画館は、国産の“石”を用いた建築としてかなり貴重で見応えのある、日本近代の代表的な“石建築”なのだ。絵画ばかりでなく、石に着目して館内を巡ると、また別の楽しみ方ができる。
そして、改めて神宮外苑の地図を見ると、外苑全体が絵画館を中心に計画されていることもわかる。イチョウ並木の延長線上に絵画館が見えるが、絵画館の建つ場所は外苑のなかでも地形的に高い場所となるように造園計画され、また、イチョウ並木は入口側の樹高が高く、絵画館側を低く整えられていて、遠近法によって絵画館の建物が遠くに大きく見える。
また、苑内にある神宮球場、以前の国立競技場などでは、貴賓席は絵画館の見える場所に設えられていたという。そんなことを知って、明治150年の今年、絵画館と神宮外苑を訪ねてみると、帝都であった東京の歴史と面影をより深く感じるだろう。
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