都心の緑あふれるエリア、明治神宮外苑。東宮御所沿いに続く青山通りからも、東京オリンピックの開会式が開かれる新国立競技場の最寄り駅である信濃町からも程近い。その明治神宮外苑の中心に位置する絵画館(正式名称・聖徳記念絵画館)は、世間一般によく知られている存在のようだが、その内部まで入ったことはないという人が案外多いのではないだろうか。
絵画館は明治天皇の事蹟を描いた絵画80点を展示し、後世に伝えるために設けられた施設だ。14歳で即位した明治天皇は大政奉還後に京都から江戸城に入り、46年間在位した。長く波乱に満ちた明治の世を治め、全国各地に行幸したこともあり、国民からは絶大な人気を得ていた。
明治天皇の「大喪の礼」が行われた
崩御後は京都・伏見の桃山御陵に葬られるが、この絵画館は、君臨した帝都・東京でのメモリアル施設という意味合いもあり、明治維新150年の今年に訪ねてみたい東京の名建築でもある。平成23年(2011年)には明治神宮の宝物殿とともに国の重要文化財にも指定されている。
そもそもこの建物が建設された場所は、明治天皇の「大喪の礼」が行われた地。当時は青山練兵場だった神宮外苑がその会場となり、現在の外苑のイチョウ並木通りを葬列が進み、絵画館の裏手にあたる葬場殿趾円壇にひつぎが安置された。
その後、絵画館の建設にあたっては日本初の一般公開コンペが行われた。応募作156点のなかから選ばれたのは、官庁営繕を専門としていた小林正紹の作品だ。これを設計原案として、当時の建築界で影響力を持っていた佐野利器や高橋貞太郎などが実施設計を担当し大正8年(1919年)に起工。途中、物価高騰による建設費の不足や関東大震災による工事の中断などを乗り越え、大正15年(1926年)10月に竣工した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら