「ジブリ」中国初の展覧会で見せたこだわり 現地主催者は求められる質の高さに困惑

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橋田 トトロや宮崎駿といった名前はわかるけど、スタジオジブリ自体を知っている人は中国ではまだまだ少ないんです。だから、まずはナウシカからマーニーまで全部作っているのがスタジオジブリという会社なんだということがわかる展示にしました。

最初は「ジブリの大博覧会」をやるつもりだったんですが、主催者であるSCLAから、中国人には理解が難しい展示だと言われました。ジブリ30年間のノベルティをはじめとするグッズをヴィレッジヴァンガード風に構成した展示は、確かに初心者にはわかりづらい。ちなみに、ヴィレッジヴァンガード風にしよう!と言い出したのは、プロデューサーの鈴木敏夫ですけどね(笑)。

星野 企画の段階からSCLAと相談して進め、日本から持ち込むことはしなかったのも功を奏したのかもしれません。ポスターのキービジュアルも中国サイドから出たものですからね。

「マニュアルが欲しい」と言われたが

矢部 文化や仕事の進め方などに関する日中の違いに加えて、スタジオジブリが求めるクオリティの高さに、SCLAは戸惑ったでしょうね。

星野 版元としてのスタジオジブリは大変厳しいですから……。

橋田 SCLAからはよく「マニュアルが欲しい」と言われたのですが、それが難しい。重要なのは、宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫、あるいは色で言うと保田道世という色彩設計担当から脈々と続く感覚的な部分。色にしても、マゼンダやシアンを何%ではなく、「もうちょっと明るく」とか「もう少し青みを強く」といった具合に、皮膚感覚で理解するしかないんです。

星野 その苦労の甲斐あって、2会場ともよい展示ができあがったと思います。開始以来、反応もよく、批判的な意見はほとんどないとか。

矢部 孫さんがネガティブな意見を探したけど、見つからなかったと言ってました(笑)。

橋田 僕は正直、初日を迎えた時、「やっとできた」「よかった」という安堵の気持ちでいっぱいでした。同じく苦労した森ビルのスタッフも嬉しそうだったし、矢部さんは満面の笑顔だし。今回の展覧会は森ビルだからこそ実現しえたと言っても過言ではないでしょうね。

右) 星野康二/Kouji Hoshino スタジオジブリ 代表取締役会長。1999年、三鷹の森ジブリ美術館設立のため、スタジオジブリ入社。運営、広報、展示などの業務を歴任した後、2002年からは展覧会やイベントのプロデュースに専従。
左) 橋田 真/Makoto Hashida スタジオジブリ イベントプロデューサー。1999年、三鷹の森ジブリ美術館設立のため、スタジオジブリ入社。運営、広報、展示などの業務を歴任した後、2002年からは展覧会やイベントのプロデュースに専従。
中) 矢部俊男/Toshio Yabe 森ビル メディア企画部部長。情報発信からイベントの企画まで、さまざまなアイデアを持って都市開発事業に携わる。94階の展示では、展示企画プロデューサーとして、豚のガイド役になって登場。

※ 初出:プリント版「HILLS LIFE」2018年9月1日号

(Edit & Text by Ai Sakamoto)

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「HILLS LIFE DAILY」編集部

六本木ヒルズ開業の翌年に創刊された、都心エリアのためのライフスタイルメディア。都市生活者に向け新たな情報やトレンドを伝え、アイデアやビジョンを広く提案しつつ、東京という街のクリエイティブな可能性を高めてゆくことを目的としている。

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