自動車関連税に政治が手を付けられない事情 減税を求める経産省、それに抵抗する総務省

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さらに軽自動車には、取得時に「消費税」と「自動車取得税」がかかり、保有時には「軽自動車税」(市町村税)がかかる。そして、利用時には「自動車重量税」、走行時には「揮発油税」と「地方揮発油税」と消費税がかかっているのである。

ここで挙げた自動車にまつわる税は、計8種類にも及ぶ。加えて、LPG(プロパンガス)で走る車なら、走行時には「石油ガス税」(国税)と「消費税」がかかるから、これまで合わせると9種類になる。

どうしてこれほど多くの税が自動車にはかかっているのか。

それはわが国の税制を形作っていく経緯の中で、創設当時にそれぞれの考え方が反映されてきたからだ。もともと自動車は裕福な人しか持っていなかった。その当時の発想から、自動車という財産を持てるほどの人は、税金を支払えるだけの経済力のある人だから、財産税的に「自動車税」をかけることにした。その後、自動車税は、登録から一定年数を経過した環境負荷の大きい自動車に対して、重課することにした。自動車が環境に対して一定の負荷を与えていることから、環境損傷負担金のような性格も併せ持つことになった。

さらには高度成長期に道路建設の必要性が高まり、自動車を買う人に建設財源の一部を負担してもらおうということで、1968年に「自動車取得税」が創設された。これは1989年に消費税が導入される前のことだ。先に自動車取得税があったが、消費税導入後も自動車取得税は残り、購入時に2つの税が同時に課されることになった。

税創設時の意義はもはや薄れてしまった

「自動車重量税」は、車検を受けることによって初めて自動車の運行が可能になるという、法的地位に着目して課される”権利創設税”とされている。重量に応じて段階的に税率を設定している点で、道路損傷負担金のような性格が強いと言える。

また「揮発油税」は、ガソリンを使って道路を走ることから、やはり道路損傷負担金のような性格がある。

確かにこのような課税根拠を持ちながら、自動車に対しては多くの税金をかけている。しかし、創設当時にはそうした発想で課税を始めたのだが、果たして今日的な意義はあるのだろうか。

自動車取得税は、取得時の課税として消費税をかけているわけだから、二重に課税する意義はない。結局、消費税率を10%に引き上げるとともに、廃止される予定だ。

そもそも今や自動車は、富裕層だけのものではない。特に公共交通機関の少ない地方では、自動車は欠かせない足となっており、富裕層でなくとも財産税的に保有時に自動車税や軽自動車税を課すことについて、意義があるとは思えない。

こうした問題意識から、冒頭の豊田社長の発言が出てきたといえよう。自工会は2019年の税制改正に向けて、消費税引き上げによる自動車ユーザーのさらなる税負担増を回避することをうたい、「自動車税」を軽自動車税並みに減税すること、「自動車重量税」の税率引き下げ、「エコカー減税」などの延長を要望している。

この要望はすんなり受け入れられそうなのかと言えば、実は容易に受け入れられない現状がある。

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