自動車関連税に政治が手を付けられない事情 減税を求める経産省、それに抵抗する総務省

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それは自動車減税によって税収が減るからだ。特に前掲の自動車関連税には、都道府県や市町村の税収が多い。だから自動車減税には地方自治体が強く反対している。

霞が関では、自動車業界を所管する経済産業省が自工会の要望を反映させるよう働きかけているが、国税を所管する財務省と地方税を所管する総務省が税収減を強く警戒する、という構図になっている。

自動車減税に向けた最大の難関は、財務省というより総務省だ。都道府県に入る自動車税の税収は年1兆5000億円ほどある。それを自工会の要望通り軽自動車税並みに税率を下げると、1000億円単位で税収が減る。まさに、“too big to fail”(税収が大きすぎてつぶせない)状態だ。

電気自動車が普及すれば大前提が変わる

その減収を補塡するとなると、他から財源を見つけてこなければならないが、自工会は代替財源を自動車ユーザーには求めないように要望している。だが自動車の減税を、自動車とまったく関係ないところから負担増や支出削減で財源を得るとなると、政治的に説得が難しい。

だからといって、自動車関連税制を現行のまま温存していてよいわけではない。ここで説明した自動車関連税とは、自動車がガソリンなどの化石燃料で動くことを大前提にしたものであるが、今後は電気自動車(EV)など化石燃料を使わない車が出てくる。それなのに、将来、現行税制のままで対応できるのだろうか。

自動車関連税制については、変わりゆく自動車の新しい姿を意識しながら改革すべく、今般の税制改正の解決策を見つけるとよいだろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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