川上量生「ビジネスはネトゲよりも簡単だ」 よくできたゲームのほうがずっと難しい

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吉田:僕自身も、やりたいこととやったほうがいいこと、そして一生懸命やればなんとかなりそうだなということをたくさん抱えているんですが、全部はできない。そして人に任せることができるものと、できないものがある。というか、何をどんなふうに人に任せるべきか、というのがいまだによくわからないんです。川上さんは、そういうときにどう判断されてますか?

川上:人に何かを任せるとき、みんながよくやる間違いは「自分の不得意なことを人に任せる」ことです。そういう人って多いんですけど、これは完全に大間違いで、人に任せるのは自分が得意なことにすべき。そして自分でやるのは、自分が不得意なことにするべきですね。

吉田:その心は?

川上:だって不得意なことを任せるっていうのは、言い換えると「やらない」ということなんですよ。人に何かを任せても、少なくとも相手のコントロールはしなければいけない。でも得意じゃないことを丸投げしたら、ブラックボックスになるじゃないですか。コントロールできないですよね。

吉田:なるほど。得意なことだったら向こうがサボっていたらわかるけれど、自分が苦手なことはそれさえわかりにくいと。

川上:企画を成功させるためには、自分がコントロールできる部分を可能な限り増やす必要があって、そのためには自分が得意なこと以外は人に任せちゃ駄目なんですよ。たとえば僕自身の例でいうと、『信長の野望』でコンピュータに任せる国は、どうでもいい国なんです(笑)。

「VR」はこれ以上進化しなくていい

吉田:どうやっても勝てる戦いはオートでいいだろうというやつですね(笑)。確かに、勝てるか勝てないかわからないので、ギリギリまで判断が迷うような戦いはマニュアルでやります。ゲームだったらできますね。それでコントローラブルな領域が広がるわけですもんね。なるほど。で、不得意なこともやっているうちにコントロールできるようになる。

今回、川上さんの『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』を読ませていただいたんですが、これが本当に面白くて。特に主観的情報量と客観的情報量に関して、客観的情報量はどこまで行っても限界があって、問題はそれをどうやって脳内で再生するかという話。

実は先日、東大でVR(拡張現実)の研究をされている鳴海拓志先生という方と対談したんですが、VRの最終的な結論は「現実世界での経験が多い人ほどVRをより楽しく感じられる」っておっしゃっていたんですよ。

川上:なるほどね。僕はVRが発展していくのはまだまだ先だと思っていたんです。なぜかというと、現実のリアルなシミュレーションを真面目にやろうとしたら、今のコンピュータ性能では全然足りないから。でも結局、現実をリアルに再現する必要はまったくなかったんですよね。

そもそも人間の脳は少しの情報量しか理解しない。むしろ現実の情報量が多すぎるから、アニメが好まれるんです。

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