川上量生「ビジネスはネトゲよりも簡単だ」 よくできたゲームのほうがずっと難しい
吉田:N高のシステムもまさにそうですね。
川上:以前、着メロの仕事をしていたときも、僕が着目したのはテレビCMでした。当時は誰もが着メロのテレビCMなんて効果がないと思っていたんです。さらに着メロって当時の大手企業にとってはメインの事業じゃなかった。
たとえばカラオケ会社はカラオケの機器を作るのがメインの仕事で、着メロというのはたぶん社内的には出世のラインから外れた人がやっていたんですよ。だから儲かっているかもしれないけれど、社内的な決裁権限は弱いだろうと考えた。
僕らがテレビCMを仕掛けたとして、他社がうちもやろうといっても前年比の利益を割るほどまで販促予算を増やすことはできないだろうと予測したんです。そして現実的に彼らが社内で決済を通せる予算金額を計算して、僕らがそれよりも多い金額をテレビCMにかけられるという段階になってからテレビCMを仕掛けたんですよ。
吉田:そうすると当然、効果が出るわけですね。
川上:効果が出るし、他のところも真似してやるんだけれど、うちよりも小さい予算しか使えないから、結果、こちらの勝ちですよね。
吉田:時代が時代だったら、軍隊とか率いたほうがいいんじゃないですかね(笑)。軍隊とか率いて、敵軍を粉砕する仕事がいちばん向いていそうな気がするんですよね。
川上:僕はね、そういう細かいことはできないんですよ(笑)。大雑把なことしかできない。何々の戦いとか、局面局面だったらいいんですけど、全軍をずっと率いるのは無理ですね。
「自分が不得意なこと」を任せてはいけない
吉田:ちなみにN高の設立に関しては、話が持ち込まれた段階でいける、と思われたんですか?
川上:最初は自分には関係がないと思いながら聞いていたんですけど、途中からこれはいけるかもと思いましたね。
吉田:いけるかもと考えたのは、教育市場がいま非合理の塊になっていると思ったから?
川上:そうですね。説明を聞いて、それは確かにいけるだろうと。そして、僕たちしかできないかもしれないと。僕は世の中にできないことって少ないと思っているんです。うまくやれば成功するものって、意外と多いと思うんですよ。もちろん成功させるための努力というのは、案件ごとによってすごく違いますが。だから何をやるかの基準は成功できるかどうかではなくて、僕たちしかできないかどうか、ですね。