プロ野球界を変える裏方たちの最新転職事情 PLMとDELTAが人材紹介サービスを始めた意味

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「データ解析の勉強をしている、求人を待っている、経験を積んでいるという主張をしたところで、採用には結び付かない。アウトプットし続けられる人材であることを球団にわからせないとダメ。

現時点で球団にできていること、できていないことを知ったうえで、できていないことの中で、自分にはこれができる、自分はこの部分で戦えば人に勝てる、というアピールができないと採用にはなかなか結び付かない」(DELTAの岡田友輔代表)という。

求職者数に比べて採用枠は圧倒的に少ないので、就職のハードルはかなり高いことは変わらない。外部人材の活用に積極的かどうかは球団ごとにかなりバラツキがある。PLMキャリアに求人票を出している球団は今のところパ・リーグ6球団とセ・リーグ1球団のみだ。

入社後の昇給は実力次第? 

要求水準が高い一方で、入り口の給与水準は低い。某球団がモデルケースとして言及している水準は35歳で月に30万~35万円。賞与には言及しなかったので、年収がどのくらいになるのかは賞与の水準にもよるが、本給だけだと年間360万~420万円、賞与が4カ月乗ってようやく480万~560万円という計算になる。

この球団だけが特別に低いわけではなく、総じて球団経営会社の給与水準は低い。要求されるだけのスペックをそなえた人材であれば、すでに現在の会社でこの倍以上の収入を得ていてもおかしくない。いくらやり甲斐があるとは言っても、収入が半減する転職には二の足を踏むのが普通だ。

球団経営会社は歴史的に鉄道会社の子会社からスタートしているところが多い。鉄道会社は総じて福利厚生は手厚いが、給与水準は高いとは言い難い。さらにその子会社となれば、なおさらだ。

親会社が代わっても、高い水準を親会社の社内規定に沿って下げるモチベーションは働いても、上げる方へのモチベーションは働きにくい。まして赤字が常態化していた時代が長いとなれば、低水準に据え置かれたままというのも頷ける。

もっとも、全体の水準はともかく、近年は有能な人材を求めているだけに、入社時点での給与水準は低くても、入社後の昇給ペースは実力次第となっている球団は多いらしい。 「部長クラスなら40歳で1000万円という事例は複数球団で出ている」(PLMの根岸友喜代表)という。

ひとたび球界での就業実績ができると、他球団もしくは他競技への転職もしやすくなる。人材の流動化が進めば、全体の給与水準も上がっていく可能性がある。これから、日本でもアメリカのようにスポーツビジネスがドリームジョブになる日が来るのかもしれない。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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