性的テロを告発したノーベル受賞医師の凄み

ムクウェゲ氏が平和賞を受賞した3つの意義

性暴力被害に取り組んできた功績が評価され、ノーベル平和賞を受賞したコンゴのデニ・ムクウェゲ医師(写真:Vincent Kessler/REUTERS)  
10月5日、コンゴで性暴力の被害に苦しむ人々の治療に当たってきたデニ・ムクウェゲ(Denis Mukwege)医師に対し、ノーベル平和賞が授与されることが決まった。性暴力問題に対峙するムクウェゲ医師が受賞した大きな意義について、2016年に同医師の来日を実現した米川正子・立教大学特定課題研究員が解説する。

コンゴ民主共和国の婦人科医デニ・ムクウェゲ氏が、イラク人のナディア・ムラド氏とともに2018年のノーベル平和賞を受賞した。

ムクウェゲ医師は1999年にコンゴ東部のブカブにパンジ病院を設立して以降、暗殺未遂に遭いながらも、医療、心理ともに4万人以上のレイプ・サバイバー(性暴力被害者)を治療してきた。

ノーベル賞委員会は受賞理由を「戦争や武力紛争の武器としての性暴力」撲滅への貢献を挙げている。筆者はこの20年間コンゴに関わり、2013年以降、ムクウェゲ医師の活動を日本に紹介してきた。今回の受賞は大きな喜びであり、心から祝福したい。

性暴力ならぬ「性的テロリズム」

筆者は、1998年から2008年までに通算4年間、コンゴ東部、西部と首都キンシャサで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員として勤務した。最後の勤務地である東部のゴマでUNHCR所長を務めた際に、レイプのサバイバーに会ったことから、紛争下の性暴力の問題に関心を寄せるようになった。

UNHCRを退職後、コンゴの紛争に関する研究に従事し、ムクウェゲ医師の演説を聞いたり、医師の論文を読み始めたりした。2016年に任意団体「コンゴの性暴力と紛争を考える会」を発足させ、ムクウェゲ医師の活動を描いたドキュメンタリー映画『女を修理する男』(原題「The Man Who Mends Women」)に日本語字幕を付けて全国各地で上映し、同年にはムクウェゲ医師の初来日を実現した。

ノーベル賞の授賞式が開かれるノルウェー・オスロに展示されたデニ・ムクウェゲ氏(左)とナディア・ムラド氏の似顔絵(写真:Nerijus Adomaitis/REUTERS)

ムクウェゲ医師が受賞した意義はどこにあるのか。それを解説する前に、まずは紛争下の性暴力が「戦争の武器」である実態を知る必要がある。

ムクウェゲ医師の受賞発表後、さまざまな報道が相次いでいるが、どのような目的で武器として性暴力が悪用されているかについて十分に認識されていないようである。

性暴力は加害者の性的欲求から行われることもあるが、経済的、政治的な理由から組織的に生じることも多い。紛争下の性暴力に相当な影響力と破壊力があるため、ムクウェゲ医師は性暴力ならぬ「性的テロリズム」と呼んでいる。

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