回収率99%!あの「日銀短観」作成の舞台裏 10月公表値からわかる台風・地震被害の実態

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公表資料にある指標の「裏側」と「表側」を元日銀マンが鋭い視点で切り込んでいきます(写真:CORA/PIXTA)

10月1日に公表された日本銀行の全国企業短期経済観測調査。「日銀短観」というほうが、なじみがあるだろう。公表されるとすぐさま各種メディアが第一報を発し、新聞やテレビのニュースでも取り上げられる注目度の高い統計だ。

調査項目が多く、公表される系列は多岐に及ぶが、なかでも大企業製造業の業況判断D.I.(※)は、景気との連動性や株価との相関が高いと言われ、重視されている。海外でもエコノミストやマーケット関係者には、「Tankan」や「Tankan survey」で通じるほどである。

※大企業製造業の業況判断D.I.
自社の業況を「1.良い」「2.さほど良くない」「3.悪い」の3択で回答してもらい、「1.良い」と回答した企業の割合から「3.悪い」と回答した企業の割合を引くことで算出

回収締め切りは、台風や地震があった後

今回は日銀短観を作成する側の視点、つまり裏側と、公表資料という表側双方から見ていく。筆者は、前職の日銀時代に短観の調査をする側に在籍していたことがあり、往時の個人的な体験を織り交ぜつつ、わかりやすく解説したい。

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今回、まず1つ注目したいのは、企業が回答した調査表を日銀が回収する基準日は9月10日だったことだ。

回答は通常、基準日前後に集中することで知られている。この間、台風21号は9月4日に関西を直撃、また、6日の北海道胆振東部地震は北海道で初の震度7、そしてブラックアウトにより北海道全域が停電するという甚大な被害をもたらした。今回の短観はこうした被害状況を反映しているため、後述する分析では、被災地の支店が公表している資料にも言及している。

日銀短観の調査は回収率が極めて高く、平均的な回収率は99%を超える。約1万社に対して、しかも回答義務がない調査としては異常に高い回収率と言っても差し支えないだろう。大規模災害があった9月調査でも全国企業で99.6%という高い回収率を維持している。毎回の無作為調査ではなく、調査の応諾と継続調査という仕組みはあるものの、調査先企業も短観を注目度の高い重要な統計と認識しているゆえだと思う。

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