日銀は公表資料が多いが、とりわけ短観については大量の情報が公表されている。調査結果や調査方法の解説などの基礎的な事項だけでもかなりのボリュームがあるが、それ以外のトリビアも読み応えがある。
たとえば、短観の歴史について、1951年に日本興業銀行(当時)が開始した「産業界の短期観測」を日本銀行が継承・改定したうえで、1957年に「主要短観」を開始し、1974年に「全国短観」に拡充。2004年には大規模な見直しがあったことなどがわかる。詳細な情報を公表して、言わば「日銀の本気を見せる」ことが高い回収率につながっているのではないか。
担当企業に拝み倒すこともザラ
これだけ回収率が高いと、調査する日銀職員も必死である。筆者も経験したことであるが、回収率100%を目指しているため、取りこぼしが許されない雰囲気がある。
回収基準日を過ぎても調査表が届かない場合、改めて調査先に回答のお願い(督促)をするのだが、先方担当者が長期出張などで不在だとやきもきすることになる。調査先の繁忙や担当者の変更等で回答を渋られた場合は、電話で頭を下げて拝み倒すこともザラだ。
調査表を回収しただけでは終わらず、記入ミスや外れ値などのチェック(審査)をする必要があるため、時間的な余裕がどうしてもほしい。しかも、日銀の仕事は1人で完結せず、ダブルチェック(再鑑)が前提なので、精度は高まるがその分、時間がかかる。
情報管理の徹底も特徴の1つだ。短観の調査表を扱う部署にはほかの部署の職員は立ち入れない。建物の構造上、別室での隔離が難しい場合は、パーティション(いわゆる蛇腹)で担当部署を囲むケースもある。
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