回収率99%!あの「日銀短観」作成の舞台裏 10月公表値からわかる台風・地震被害の実態

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日銀は政府機関ではないが公的機関なので、クールビズのエアコン設定温度28℃を愚直に守っている。パーティションで区切られるとエアコンの風が遮られるし、パソコンやプリンターが発する熱もこもる。

また、冬場に誰かが風邪を引くと、パーティションの内側では集団感染のリスクが高まるので、おちおちと風邪も引けない。調査表の誤廃棄を防ぐため、ゴミ箱まで管理される(オンライン調査を導入しているが、まだ全面移行はしていない)。

最終集計には当日まで「誰1人」アクセスできない

調査表段階での情報管理も徹底しているが、集計した情報が漏れることがないよう、公表資料は公表日の早朝に作成している。今回の短観の公表日は10月1日であり、首都圏では前日夜から台風24号による暴風雨に見舞われていたので、関係者はさぞ気をもんだことだろう。

短観の最終集計結果は、公表日の当日まで誰1人アクセスできない。この誰1人というのは、本当に例外なく「誰1人」であり、黒田総裁や短観を所管している調査統計局の局長や現場の管理職であってもアクセスできない。

数日の余裕を持って最終集計結果を見て、数字がおかしいところがあれば調査先に再確認したいだろうが、それができない仕組みを作っている。本番一発勝負だ。そのためには、正しいデータを格納することが必要であり、調査表の審査が重要になる。

短観は8時50分に公表されるので、最終集計結果のデータダウンロード、資料作成、資料のチェックなど諸々の作業を当日朝に早出してこなさなければならない。ここまで厳しい情報管理体制を敷いている統計は海外を見渡してもまれだ。若干やりすぎのような気もするが、ここまで徹底しなければ99%超という回収率は維持できないのだろう。

本店の公表資料に比べると知名度は劣るが、日本銀行の32の支店と一部の事務所でも短観を公表している。公表は本店が公表した日の午後が多いようだ。

支店の中には短観の分析資料を公表するなどの取り組みが見られる。日銀仙台支店が公表している「多様な業況判断D.I.のクセと読み方-東北地域を対象としたケーススタディ-」は、短観と他の統計作成機関が作成した統計とを、東北地域を対象に比較している。

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