アメリカの中間選挙が11月6日に行われた。アメリカが中国からの輸入品に関税をかけると中国も関税で応戦する姿は、米中貿易摩擦というよりも米中貿易戦争という表現がしっくりくる。ある意味では「戦時下」の選挙という見方もできよう。
米中貿易戦争には、安全保障上の問題などの政治的な理由もあるが、アメリカが貿易赤字国であるという要因が大きい。そして、国別に見ると、日本に対しては689億ドルの貿易赤字を計上している(2017年、貿易財の収支)。現在、一時的に日米貿易摩擦は回避されているが、じき自動車を中心に再燃するというのが筆者の見立てである。
アメリカの赤字体質は改善の兆しなし
そこで、今回は日米貿易摩擦の可能性について考えてみたい。まず、アメリカのマクロ経済の構造を確認すると、民間部門の貯蓄投資差額は黒字であるものの、政府部門が巨額の赤字なので、輸入超過になるという構造要因がある。長らく変わらない双子の赤字である。
概念としては、国内での不足は海外からの輸入で補わなければならず、対全世界という視点でみれば、政府部門の巨額の赤字が改善されないかぎり、中国からの輸入が減っても、残りの世界からの輸入超過は続くことになる。
トランプ減税が来年度も実行されるのかという不確定要素はあるが、インフラ投資については共和党・民主党ともに程度の差はあるものの前向きである。社会保障支出の増加は民主党が望むところであるし、トランプ大統領が貧困層の取り込みを企図する可能性も否定できない。政府部門の赤字は続くので、アメリカの輸入超過・貿易赤字体質が変わることはないだろう。
貿易統計に目を向けて、アメリカセンサス局のデータを基に、2017年の貿易財の収支を確認すると、アメリカから見た赤字相手国1位は中国の3756億ドルであり、2位のメキシコ(710億ドル)、3位の日本(689億ドル)と続く。品目に目を向けると、輸入額としては、1位は乗用車の177.2億ドル、2位は石油等で133.2億ドル、3位は電話機(携帯電話を含む)112.3億ドルとなる。
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