厚生労働省による毎月勤労統計の不正に端を発した政府統計の問題は、論点が多岐にわたり、国会での審議も収拾がつきそうにない。弥縫策で取り繕ってきた統計部署の予算・人員不足の限界が露呈し、届出なしの調査方法の変更といった統計法違反に該当する事例や、ケタ違いのチェック漏れによる修正など、次々と不正やミスが発覚している。
不正・ミスの再発防止には、経緯や動機などを確認する必要があるが、厚生労働省の「毎月勤労統計」をめぐる統計不正の再調査を行った特別監察委員会には、第三者性・中立性の疑いがあり、不正発覚から2カ月以上が経過しても、信頼に足る報告書が作成されていないという異常事態になっている。
監察委の報告書に第三者委員会がダメだし
監察委が1月22日と2月27日に公表した報告書は、散々な内容だった。本来全数調査が必要な大規模事業所について2004年から東京都だけ抽出調査した理由を、「客観的資料が見当たらず不明」「復元処理を行わなかった理由は当時の関係者の記憶があいまい」「客観的資料が残っていない」と述べた挙句、「システム改修をした担当者が死去しているため原因不明」としている。平成も終わろうとしているこのご時世に、「死人に口なし」とは前時代的な発想としか言えない。
焦点とされていた組織的隠蔽については、担当課(室)の長レベルの判断のもと、部下の協力を得ながら虚偽報告が行われたことを認める一方、「隠蔽行為」があったとは認められなかったと判断。結論ありきと非難されても仕方がない。
これに対する有識者の見方は厳しい。弁護士や研究者、ジャーナリストなどで構成される、第三者委員会などの報告書に格付け・報告する組織は、3月8日に公表された監察委の報告書には9人全員が「F(不合格)」をつけた。
全員Fという“偉業”を達成したのは、これまでの20回の格付けで当該報告書を含めてまだ2回だけである。9人の委員の評価項目ごとのコメントを見ても調査の不備を指摘する意見が並び、「当委員会としては、新たな調査委員会を組成して調査をやり直す必要があるとの意見で一致した」としている。
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