監察委は、そもそも人選に問題があった。委員長の樋口美雄氏は、厚生労働省が所管する労働政策研究・研修機構の理事長を務める。言わば、100%子会社の雇われ社長が本社の不正について、お手盛り調査をしたようなものだ。
総務省の西村清彦統計委員会委員長の前任だった樋口氏は、労働経済学だけではなく政府統計についても造詣が深い。その樋口氏が国会でときに答弁を拒否し、主張がブレる様子は、学会の重鎮にして、紫綬褒章を受章された方の言動にはとても見えない。
総務省で起こる統計局Vs.統計委員会
毎月勤労統計の不正を指摘した統計委員会の評価も厳しい。3月6日の統計委員会で提出された、委員5名による意見書には、「今回の『監察委員会追加報告書』は、統計技術的・学術的側面から少なくとも以下の三点で十分な説明がなされず、またその評価の根拠が明らかにされていなことを受けて、統計委員会として、厚生労働省に対して説明を求めたい」と記載されている。怒り心頭なのだろう。脱字がある資料が公表されており、臨場感がある。
総務省には、統計局などの統計を作成している部署と、専門的かつ中立・公正な第三者機関としての統計委員会が置かれている。本来であれば、双方の目的は、正しい政府統計の作成・公表という点で一致しているはずだが、総務省の官僚サイド(統計作成側)は、統計委員会を煙たがっているようだ。
西村委員長が多忙を理由に国会審議に協力しない意向を示したという文書が衆議院総務委員会の野党理事などに配布されたが、2月25日には、西村氏に無断で総務省職員が作成した捏造文書だったことが発覚。また、統計委員会の議事概要や議事録の公表が遅延しており、事務方に十分なリソースを割いていないことがうかがえる。昨年9月28日を最後に、7回分の議事録が公開されておらず、政府統計の議論に悪影響を及ぼしかねない状況にある。
国会や統計委員会への対応だけではなく、肝心の統計作成においても、総務省の対応に疑問を感じる事態が生じている。
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