調査先の企業からすると、全国というくくりでまとめられてしまうと、回答がどのように結果に反映されているのか実感が湧きにくいが、支店レベルでの公表があれば地元の景況感がわかりやすくなる。他の統計との比較をすることで統計ユーザーの注目を集め、利便性を高めるというのは、なかなかうまい戦略だ。
惜しむらくはホームページがどうにも見栄えが悪かったり、公表資料の掲載期間が短く、過去のデータが入手しにくい支店が散見される。支店ごとにホームページのレイアウトも違うので、横並びで資料を探すのに一手間かかる。予算も人手も足りないのだろう。これは日銀だけで片付く話ではなく、日銀の経費・予算の認可は財務大臣が権限を持っているので、繊細な問題なのかもしれない。
さて話を「表」側に戻して、台風・地震の被災地である日銀の大阪支店や札幌支店の短観公表資料という表側を見てみよう。
大阪は業績別で見ると気になる動きが
大阪支店の短観は、大阪支店が管轄している大阪府・奈良県・和歌山県だけではなく、京都支店が管轄している京都府・滋賀県、そして、神戸支店が管轄している兵庫県を含めた近畿地区をまとめた形で公表している。回収率は9月4日に台風21号が直撃したにもかかわらず99.4%であり、前回調査の99.3%とほぼ変わらない。
大阪支店の全産業の業況判断D.I.は14ポイント(%ポイント)となっており、前回から1ポイント悪化している。業種や企業規模の構成が違うため全国の結果とは単純比較できないが、全国の全産業の業況判断D.I.が15ポイントで前回から1ポイント悪化していることを踏まえると、近畿地区は健闘していると言っていいだろう。
もっとも、業種別に見ると気になる動きがある。宿泊・飲食サービスは-12ポイントで、前回から6ポイント悪化。2017年12月調査から前回の2018年6月調査まで、-17、-15、-6と改善傾向が続いてきたが、それにブレーキがかかった形だ。先行きについても慎重な見方をしており-12ポイントと、足元と同じ水準にとどまる。
関西国際空港に離発着する旅客便は回復したが、関空への連絡橋の被害から、マイカーやレンタカーでアクセスができない状態が続いている。旅行客、特にインバウンド需要が低迷する可能性を見込んでいるのだろう。大阪支店が9月12日に公表した記者会見冒頭説明要旨に「先般の台風21号による交通インフラ面の影響によって、外国人観光客を中心に客足の減少が懸念されるため、動向を注視していきたいと思います」とあり、今回の短観には、その懸念が表れている。
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