採用担当必見! モンスターか新時代の旗手か、”ゆとり世代”2010年卒のつかみ方
「ゆとり世代」と聞いて、どんな若者像を思い浮かべるだろうか。コミュニケーション能力が低い、打たれ弱い、自己中心的……。最近のメディアでは、そんな言葉で「ゆとり世代」を表現することが多い。今年、就職活動をする2010年卒業生は、小学校から高校まで「ゆとり教育」を受けた初めての世代で、「ゆとり第1世代」と言っていいだろう。なにかとネガティブに評価されがちな世代ではあるが、彼らを否定し、拒絶しても何ら解決にはならない。今後、社会人として現場にやってくる彼らの世代感を知り、どう接していくかを考えることが重要だといえる。そして、自社の未来を託せる彼らの採用に当たり、何が必要なのか探っていきたい。
私たちの世代は失敗作(策)なのか?
まず、彼らをより理解するために、育ってきた時代背景を見てみよう。ストレートで大学に入学した場合、10年卒業生のほとんどは1987年生まれとなる。小学校に入学するときには、すでに「ゆとり教育」が始まっており、中学校では「総合的な学習の時間」が新設され、さらに「絶対評価」が導入。高校入学と同時に、高等学校における新・学習指導要領の実施が始まった。しかし、高校3年時には、「ゆとり教育」見直し論が浮上。まさに、「ゆとり教育」の拡大と否定を一身に受けた世代といえる。
「何かが足りない世代なのかと不安になる」「大人の都合に振り回された気分」「私たちは失敗作(策)なのか? 」。これは、就職サイト「ブンナビ! 2010」登録学生へのアンケートで、「『ゆとり世代』と言われることについてどう思うか」を質問した際のコメントだ。大人によって一方的に与えられた「ゆとり教育」が、今になって否定されているという現実が、彼らに社会への不信感を抱かせているのかもしれない。
社会・経済情勢を見ると、バブル崩壊の影響でリストラなどの雇用不安を間近に感じ、多発する企業の偽装問題や環境問題など、暗い話題が多かったことがわかる。しかしその反面、家庭環境に目を向ければ、幼いときからゲームや携帯電話、インターネットなど、必要以上にモノや情報が与えられてきた一面もある。このような、行き届きすぎた生活環境に育ったことは、彼ら自身も実感しているようだ。
「確かに、私たちはぬるま湯の中にいる。そして今、いきなり荒波に放り出されようとしている」。この学生のコメントが、今自分たちのいる環境と実社会とのギャップの大きさを如実に表している。漠然とした強い不安。今の彼らの気持ちを表現するとすれば、こんな言葉になるのだろう。こうした考え方が、彼らの職業選択にどのような影響を与えているのだろうか。
「アンチゆとり」を探す 厳選採用は限界?
いくつかデータを紹介したい。毎年、新入社員の意識調査を行っている社会経済生産性本部の調査結果だ。転職・勤続についての意識変化を見ると、「条件のよい会社があれば、さっさと移るほうが得」と、「今の会社に一生勤めようと思っている」という回答が、この10年できれいに逆転している。
もう一つのデータは、将来のキャリアプランについて聞いたもので、「社内で出世するより、起業したい」と回答した割合の変化だ。03年の31・5%から、5年後の08年には15・8%と一気に半減している。リスクはなるべく少なく、一つの会社で一生働き続けたい。極論すれば、「安定」への強い憧れを持った新入社員が年々増えているということだ。
安定を求める「ゆとり世代」は、採用する側から見れば、頼りなく映るのも確かだろう。だからここ数年、学生の「厳選採用」が叫ばれ、リスクをおそれない高いチャレンジ精神や競争心を持った、いわば「アンチゆとり学生」の獲得に企業は躍起になっていたわけだ。しかし、この「アンチゆとり学生」は、データを見るかぎり、年々減少する可能性が高い。しかも、若年層の人口は減っていくことが明白だ。その現実の中で「アンチゆとり学生」だけをターゲットにした「厳選採用」を、いつまでも続けられるとはいえないだろう。