採用担当必見! モンスターか新時代の旗手か、”ゆとり世代”2010年卒のつかみ方
自己成長に貪欲 「育成採用」が必要
さらにデータを見ていこう。下の表は、社会経済生産性本部と日本経済青年協議会が毎年実施している、新入社員への「働くことの意識調査」の結果の一つだ。会社を選択する際に最も重視した要因を聞いたもので、「会社の将来性」が減り、「仕事が面白い」を求める割合が増えている。最も比率の高い、「能力・個性が生かせる」と合わせて考えれば、会社より個人(自己)を重視して就職先を選択する傾向が見られる。「安定」を重視する彼らではあるが、会社におもねる安定ではなく、自分の興味あることを見つけ、成長することで安定を得たい、という思いを感じることができる。
就職活動がスタートしたばかりの時期は、社会への知識不足から、「安定=大手企業」と考えがちだ。事実、文化放送キャリアパートナーズが今年9月に行った学生アンケートでは、大手企業を希望と回答した割合が、65%以上に上る。しかし、就職活動を経て、自分の能力や興味を生かし成長したいという意識が徐々に醸成されるのかもしれない。
さらに、キャリアアップへの志向も今までの世代以上に高いのも特徴だ。「社会への漠然とした不安を感じている彼らは、いざというとき、どこでも通用するスキルを身に付けたいという、成長意欲が強い世代でもあります」と、『ゆとり社員の処方せん』(朝日新聞出版)の著者でもある、研修会社ウィル・シードの池谷聡氏は言う。「働くことの意識調査」でも、就労意識に関する質問では、どこでも通用する専門技能を身に付けたい(92・6%)と、高い成長意欲がうかがえる。
強いチャレンジ精神や競争心を持った「アンチゆとり学生」を厳選する採用よりも、個人の能力や興味を生かす「ゆとり世代」の育成採用。限られた人材を、より戦力化することを考えると、そろそろ採用方針を見直す時期に来ているかもしれない。
「彼らを、“選ぶ”という立場ではなく、“知る”という姿勢で接すると、新たな一面が見えてきます」
すでに、育成を意識し、自らの面接を「カウンセリング面接」と位置づける新日軽・総務人事部の大島章嗣課長の言葉だ。「育成を前提とした、カウンセリング面接という視点に立つと、より多くの学生の伸びしろに気づくことができます」(大島氏)。
最近、採用面接後に評価フィードバックを実施する企業の人気が高い。これも、育成という視点での採用が、学生に評価されている一つの表れだろう。自己成長を望む「ゆとり世代」の学生に、育成視点で接し、彼らのポテンシャルに気づき、それを育てていく。そうすることで、さらに成長意欲の高い学生を引き付けることができる。そんな好循環を作ることができれば、「ゆとり世代」の採用も明るいのではないだろうか。
ゆとり世代を生んだ前世代の社会的責任も
最後に、これまで紹介してきた彼らの特徴を踏まえて、育成採用のポイントをまとめた。
・受容=選ぶより知ることを重視して、彼らを受け入れる。否定から入れば拒絶される可能性が高い。
・事実=よいことばかりを伝えていては、逆に不信感を募らせることになりかねない。ネガティブな事実も伝えることが大切。
・期待=成長へのモチベーションを高めるためにも、将来に向けた期待を伝えることが重要。
・支援=期待に見合うだけの具体的支援を提示。本気で育てる意思を見せることで、より成長意欲の高い学生を採用することが可能。
「ゆとり世代」の育成採用は、成果を生むというだけでなく、企業の社会的責任という側面もあるかもしれない。「育てたように子どもは育ちます」(学生のコメント)。この言葉が物語るように、彼らを育てたのは、紛れもなく前世代であるわれわれ自身ということも認識しなければならない。
(週刊東洋経済、協力:文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所)
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