茨城県に住む19歳の女性は、最近、専門学校を中退した。美容師を目指していたが、家庭の事情で断念せざるを得なかったという。もう学業に戻る気はない。「自宅から通える範囲が条件ですが、できれば都内で仕事したいですね」。学生時代から興味のあった美容商品・サービスを扱う企業での接客業を希望しているという。
そんな彼らに就職できる道はあるのか?
「就職Shopしんじゅく」の奥健輔Shopリーダーは、「『しんじゅく』では月に80人ほどが利用し、20代が多い。中小規模の販売・サービス系企業やIT企業を中心に採用意欲は高く、決定率は約25%と高い」と語る。
そもそも中小企業は、新卒一括採用の枠組みでの人材獲得に、お手上げ状態だ。1人当たりの求職者に対して、どれだけの大卒の求人数があるかを示す、大卒求人倍率調査(リクルートワークス研究所調べ)を見ると、2019年3月卒の新卒採用では、従業員規模5000人以上の企業の求人倍率が0.37倍、同1000~4999人の企業は1.04倍だったのに対し、同300人未満の企業は9.91倍だった。
働き口を求める若者と、大卒の採用に苦戦する企業とのマッチングは、「需要の高さを感じるが、近年高まってきたというよりは、潜在的にあったという印象」(奥リーダー)と分析する。そうした企業は学歴や経歴も不問で、中退者や既卒生でも歓迎する会社が多い。糸口さえ見つければ希望の職種だって見つけられる可能性がある。
もっと再スタートできる土壌づくりが不可欠
ただ、こうした取り組みがあっても、現実的に大卒か否かで職業選択の幅は大きく変わってしまう。社会通念として、そのレールに乗れないのは本人の責任だと、突き放す向きもある。
それでも、働くことで人生を充実させる権利は、誰にも平等なはずだ。ドライな視点で言っても、労働力人口が先細る日本の現状で、1人でも多くの若者が経済活動に携わってもらう必要がある。そのために、進路で挫折しても、誰でもいつでも再スタートを切れる土壌が不可欠だ。
先述の岩棚さんは就職を控えてこう語った。「いきなり42.195kmのフルマラソンは無理なので、気負いすぎず、まずは3kmのジョギングから」と。職業を紹介するサービスや受け入れる企業、あるいは社会の目も含めて、そのジョギングに付き合う”伴走者”が求められている。
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