バラック・オバマを大統領に導いたインターネット戦略とは

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 2009年1月20日にアメリカの新大統領になるバラック・オバマ。彼が米大統領選で35歳以下の若い世代に圧倒的に支持され勝ったのは、オバマ陣営が新しいメディアを駆使したからだ。従来の米大統領選の戦い方は、多くの優秀な人材を選挙本部に集め、大量に運動員を駆動して各家庭を訪問したり、電話で投票を呼びかけるというもの。

だが、オバマ陣営は今回の選挙選にインターネット、電子メール、情報携帯端末などを駆使する新しい手法が目立った。選挙運動でとくに駆使されたのはソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)のmy.barackobama.com(マイ.バラックオバマ.コム、略称:MyBO)。バラック・オバマはSNSが選挙戦に「大きな貢献をした」といい、自らも携帯情報端末のブラックベリーを選挙戦中、活用していた。
 
 現在、オバマ陣営は、http://change.gov/ というウェブサイトを設定。ここを通して、優秀な人材確保や政策実行を浸透させようとしている。

選挙運動に際し、オバマ陣営が行ったことは、まず、数百万のEメールで選挙への支援を訴えていくこと。次にインターネット上のウェッブを有効に使って、選挙戦への原動力になるよう働きかけた。

SNS、MyBOの立ち上げには、インターネット世代の旗手、クリス・ヒューズが先頭に立って参画。ヒューズはSNS大手、Facebook(フェースブック)の共同設立者で、オバマと同じハーバード大卒だ。アフガン進攻やイラク戦争を起こしたブッシュ政権に疑問も持ち、オバマ候補に意義を感じたヒューズは、高給だったFacebookを辞めて、オバマ陣営に加わった。

ヒューズを初めとする選挙本部では、ヒューズと同世代の若者たちを初めとするインターネット世代に、選挙のボランティア活動参加を呼びかけ、親にも説得するよう訴えていった。つまり、ネットを扱い慣れた若い世代を、選挙運動のマーケッテイング要員と化し、効率的に選挙選を展開していった。

ネットを使ったオバマ選挙戦のグループ会合は、なんと15万回以上行われ、若者たちはさらに選挙運動に参加していった。オバマが大統領選に勝った時、投票権を得たばかりの18歳以上の若者たちが「自分たちでも社会を変えることが出来たんだ」と、大騒ぎで喜んだのである。

オバマを圧勝に導いたMyBOを訪れてみよう。オバマの政策、生い立ちから、次期ファーストレディのミッシェル・オバマ、次期副大統領のジョー・バイデンらの背景が、「LEARN」というコーナーで知ることができる。また動画配信サイトYouTubeによる演説ビデオが見られ、MyBOからYouTubeに入って、ハリウッド俳優のオーランド・ブルームらがオバマ陣営のボランティアになって有権者に電話をかけるシーンや、マット・ディモン、ブルース・スプリングスティーンがオバマを応援する映像なども視聴できる。また、Tシャツ、アクセサリー、カップ等オバマグッズも買え、ビジターを飽きさせない工夫が凝らされている。

MyBOの使い方の基本は簡単でクリックすればよいのだが、詳しいサイトの使用法は、ウェッブ上のビデオYouTubeの若い米国人女性によって説明されている。MySpaceやFacebookのように、MyBOの中にユーザー個人が自分の選挙戦応援サイトの設定が可能。

MyBOは選挙運動だけでなく、資金集めでも優れた機能を発揮。クリック一つで献金画面に飛べ、クレジットカードで1ドルという少額でも献金できる。選挙前日に亡くなった祖母の闘病見舞いという個人的な事情で、選挙戦を一時中断し、ハワイに戻ったオバマ。だが、その間もMyBOは健在。着実に献金を集めることができたのだ。

また、この仕組みなら、金銭的にそれほどゆとりのない若い有権者でも、1回10ドルなど無理のない額で献金できる。オバマ陣営は約100万人の個人献金者を集めた。既に献金してくれた人に、メールで追加の献金を依頼したり、インターネットで彼らの友人たちにも献金を促していった。こうしてオバマは6億ドルという巨額な献金を集めたのだ。選挙選直前になるほど献金額は劇的に増えていき、今年9月には1億5000万ドルを集め、ゴールデンタイムにオバマの選挙選コマーシャルを全米7大ネットワークで流すことができたのである。

オバマ圧勝の影には、新しいメディアがあった。ネットで参加しやすくなった選挙活動や、SNSによるオンライン献金、選挙運動向けウェブで、全米に草の根レベルで有効な組織的な動員ができた。ハーバード大学を含むアイビーリーグの選挙戦に強い教授たちや学生たちが、積極的に知恵袋として参加し、ハイテクという技術力で、アメリカ人の心をつかんでいったといえる。アメリカに比べればまだまだだが、日本の選挙でも、インターネットの活用が進んでいくに違いない。
(Ayako Jacobsson =東洋経済オンライン)

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