マツキヨも本格参戦、激化するドラッグストアの調剤薬局争奪戦
ついに巨人が動いた。ドラッグストア最大手マツモトキヨシが、調剤薬局2位の日本調剤と提携に向けた協議を開始した。来年4月をメドに共同出資会社を設立。調剤併設型ドラッグストアの開設や医薬品の共同仕入れ、薬剤師の教育なども手掛ける見通しだ。
「業界で生き残っていくためには専門性を打ち出すしかない」。会見で松本南海雄社長は淡々と語った。その言葉どおり、ドラッグ業界には再編の波が押し寄せている。すでに1店舗当たりの売上高の伸びは鈍化しており、企業数も飽和状態。来年6月ごろ施行予定の改正薬事法によりコンビニなど新規参入企業が増えれば競争激化は必至だ。こうした中、ドラッグ各社は美容や介護など専門性が高い対面型事業の強化で新規参入組との差別化を進めている。
対面事業の中でも、調剤は“金脈”といえる分野。日本薬剤師会の調べによると、2007年の調剤薬局の市場規模は約4・9兆円。今後高齢化や国の医療費抑制政策を背景に12年には8兆円に膨らむとの試算もあり、ドラッグの成長に調剤分野の強化は不可欠だ。
ところが、これまでドラッグチェーンの買収を重ねてきたマツキヨは、同分野で完全に出遅れていた。現在の調剤併設店は全店舗数の約1割にすぎず、スギホールディングスなどライバルに大きく水をあけられている。また、ドラッグ業界は慢性的な薬剤師不足にも悩まされており、自社で併設店を増やすのは難しいという事情もある。
日本調剤はそんな状況下のマツキヨにとって、まさに「渡りに船」。提携が実現すれば10年3月末までに併設店を200店舗まで増やすほか、将来的には併設店の比率を5割まで増やしていく。
調剤薬局をめぐっては、8月のセブン&アイ・ホールディングスと最大手アインファーマシーズとの提携など争奪戦が続く。だが、「ドラッグの薬剤師は調剤だけでなくカウンセリング能力も必要」(業界関係者)との指摘もある。ドラッグ各社には提携を単なる人材確保にとどまらせない戦略が求められそうだ。
(倉沢美左 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)
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