「わかる!」とつい反応することがダメな理由 無意識に「敵」を作っているかもしれない

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一般的に、家族や恋人は、ほかの人よりも依存関係が強いので、他人にはあまり言わないような強い口調を使ったり、攻撃的な態度になることをイメージしていただければ合点がいくと思います。依存関係にある相手は、攻撃対象になりやすいのです。依存関係にある「わかってくれる」と思っていた相手に、違う意見を主張されたとき、相談したいときに相手が受け入れてくれなかったときなどに、強く「裏切られた」という気持ちを持ちやすくなるからです。

ですから、職場や友人関係で、依存を強くしてしまうことは、相手から攻撃されやすくなると言えるので注意が必要です。

なんでも話してくれて、頼られるほうもうれしくて、いつも相談に乗っていたにもかかわらず、ちょっとした意見の相違や、すれ違いで手のひらを返したように攻撃されては、かないません。「わかってくれると思ったのに!」と逆切れされたり、お互い深いところまで情報共有してしまっていて、それを基に悪いうわさを流されるなんていう事態に発展したりすることもあります。

実際、そのような経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。「あれだけ、面倒を見てあげたのに」「すごく親しかったはずなのに、どうして?」とショックを受けるケースは、相談事例としても多くあります。

距離感を保つ、相手とのかかわり方

では、距離感を保つためには、どうかかわればよいのでしょうか。

相手に「共感」することが大切になります。「共感」とは、相手の気持ちのままに受け取ることです。

同感との違いを示すと、同感が「わかる! 私も同じように感じる」という「私の気持ち」を相手に伝えることなのに対し、共感は、私にはわからないかもしれないけれど「あなた」がそう感じるのねといった、「あなた」の気持ちを受け取ったことを伝えるかかわり方です。

冒頭の「この前、こんなことがあって本当につらかった」に対するかかわり方の例を挙げると、

同感「うんうん、つらいよね(私も同じように思う)」

共感「(あなたは)つらかったのね」

というかかわり方です。

共感は、同感に比べて、冷たい対応に感じる方もいると思うのですが、この距離感こそが大切です。

たとえば、紙に書かれた文字を見るときに、あまりにも目を近づけすぎるとピントが合わずに見えないので、少し目から離し、距離を保って読むことをされていると思います。

人間関係も同じく、ある程度の距離感が必要です。それが、相手と対等な関係を育むことにつながります。適度な距離があるからこそ、相手を尊重でき、健全な関係性を保つことができるのです。

日本語は、「私」や「あなた」といった主語を省略して使う言語なので、わかりづらいと思いますが、同感は、主語が「私」、共感は「あなた」です。

もちろん会話のなかで、同感対応をしてはいけないということではありません。特に初期対応(最初のうちの対応)に、共感対応を心掛けていくだけで、相手との本当の信頼関係を結んでいくことができます。

いらぬ攻撃を防ぎ、理解し合い信頼できる関係性を築いていくための参考にしていただければ幸いです。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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