自分の無知を自覚していない人が残念なワケ 本当は知らないくせに知ったかぶりする危険

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知るべきコトをほんの一端しか理解していないことは少なくありません(写真:cba / PIXTA)
インターネット上に流布する「フェイクニュース」が問題になっている。出どころが怪しい真偽不明の情報を、人はなぜ信じてしまうのか? 深く考えずにわかった気になるのを逃れるすべはあるのか? 
『知ってるつもり――無知の科学』の著者で、認知科学者として長年研究を重ねてきたスティーブン・スローマンとフィリップ・ファーンバックの2人が、私たち人間が陥りがちな「自らの理解度を過大評価してしまう」という罠について解説する。

9.11や3.11は予測できたか?

ジェラルド・R・フォード、ジョージ・W・ブッシュ両大統領の下で国防長官を務めたドナルド・ラムズフェルドの、有名な言葉がある。

「世の中には、わかっているとわかっていることがある。これは自分たちにわかっているという事実がわかっていることだ。一方、わかっていないことがわかっていることもある。つまり、自分たちにはわかっていないという事実がわかっていることだ。しかし、わかっていないことがわかっていないこともある。自分たちにわかっていないという事実すらわかっていないことだ」

わかっていないことがわかっているなら、対処できる。難しいかもしれないが、少なくとも何に備えればいいかは明白だ。攻撃が来ることはわかっているが、いつ、あるいはどこから来るかはわからないという場合、軍は兵に招集をかけ、武器を準備し、できるだけ臨機応変に対応できる体制を整えておけばいい。

2001年初頭の時点で、治安当局にはニューヨークのワールド・トレード・センターが中東のテロリストの標的となっていることはわかっていた。実際に1993年には攻撃を受け、6人の死者と1000人の負傷者を出している。テロの標的であることがわかっていたので、警備員を増員したり自動車用のバリアを設置したりするなど、セキュリティを高める対策をいくつも打っていた。

しかし本当に問題なのは「わかっていないことがわかっていないこと」だ。何に備えればいいのかもわからないのに、どうすれば備えなどできるのか。2001年9月11日に大型旅客機がミサイルとして使われ、ワールド・トレード・センターが崩壊するなどと、誰が予測できただろう。このテロ攻撃によってアメリカ人の安全保障に対する認識は一変し、それがアフガニスタン、イラク、シリアでの大規模な戦争から、新たな戦争やテロ組織の台頭まで、中東地域におけるさまざまな悲劇につながった。

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