何しろ、会社を作る初期投資は物すごく安くなり、300万円もあれば十分会社を設立できます。最もかかるコストが人件費とオフィス賃貸料ですから、ともに安価な地方でビジネスを起こす方が絶対的に有利です。昨年、岩手県紫波町につくった「はちすずめ菓子店」は完全なビーガンフードショップ(絶対菜食主義者のための店)で、パイやキッシュなどを調理販売していますが、売り上げが倍々ゲームで増えています。
店主の女性1人(阿部静さん)、アルバイト2人ですので、むしろ生産量が追い付かないという問題がありますが、価格も通常のアップルパイよりはるかに高いにもかかわらず順番待ちの顧客が行列をなしているわけですから、3人を養うには十二分の利益が出ており、ビジネスとしては大成功です。
こういうビジネスは、東京だと高い家賃に負けて続けられません。いわゆる「コスト負け」です。しかし、地方ならできるのです。彼女(阿部さん)はたまたま自分がビーガンだったこと、料理が好きだったこと、料理は見た目も重要だ、という個人的趣味が融合してこういうビジネスになっただけです。恐らく読者の皆さんのだれもが、「こういう何か」、をお持ちなのではないでしょうか。それが実際にマネタイズ(お金になる、稼ぐ)できる時代がやってきた、と考えると、この時代は決して悪い時代ではない。個人にとっては企業のサラリーマンという「奴隷」のような生活から解放されるチャンスがあるわけです。
これで思い出しましたが、佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)とお話したときに、佐藤さんが「日本のサラリーマンは奴隷以下だ」、とおっしゃられていたのが印象的です。つまり、帝政ローマ時代でさえ、奴隷は「必要な再生産コスト」を受け取ることが最低条件だった。人間にとっての再生産コストとは、食べて、寝て、家族を養い子孫を増やして教育をして一人前の大人にする一連のコストにほかならない。その金もない、という現代の低賃金労働者(非正規雇用者)は、奴隷が保証されていた賃金すらもらっていないことになる、というのが佐藤さんの解説です。
先ほども書きましたが、AIのおかげで今や起業コストはとても安い。サーバーもアマゾンと契約すれば課題は解決しますし、税務申請はほとんど税務署がくれるソフトでことが足ります。労務管理も同様で、グッチーポストの例で言うと10年前の会社設立時と同様のことを今やると、だいたい10分の1くらいのコストで済んでしまいます。誰でも手軽に稼げる時代が来たわけです。
そうなると、経済全体の動きも当然変わってくるわけで、いつまでもGDPばかり見ているような政策決定は間違うに決まってる、としか言いようがないわけですが、「大学の先生には多分伝わらないだろうな」、と思いながら、こうして皆様に発信をしているわけです。やるかやらないかはみなさま次第ですが、人間らしい生活を取り戻すチャンスが出てきたのは事実です。
(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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