昨年、みずほフィナンシャルグループが「約6万人の行員を10年のうちに1.9万人削減して4万人規模に移行する検討に入った」との報道があり、日本の金融業界にも衝撃を与えましたが、金融業に関して言えば、正直10年などというそんな長い時間は残されていないでしょう。私が取引したフィンテック企業は取り扱い資金量で言うと4-5兆円くらいですので、日本でいうと地銀の中位行といったサイズで、社員数は20数人です。たったそれだけでいいわけですね。
金融はAIに向いている典型的な産業
実は2年ほど前、この話をしながら「みなさん、クビになりますよ・・・」と地銀の支店長が集まる講演会で致しましたところ、場内は失笑の嵐となって、こちらが驚きました。この種の話が近未来の話だとお思いだったのでしょうが、すでにアメリカでは現実に動いていた話で、今となってはこれを笑える日本の銀行員はいないと思います。
さらに驚いたのはそのあとの懇親パーティー。某地方銀行の支店長が、「山口さん、あんたはもうアメリカに長いので日本の事情に疎くなっているんです。われわれのような人間が毎日毎日汗水たらして取り引き先に通い、不在なら名刺を置いて、それでも毎日顔を出す・・・そうやって営業を積み重ねてビジネスをするのが日本の金融業であって、それをしなければビジネスが成立しないのが日本なのです。あなたは実情がわかっていない」
とおっしゃるわけですね。
この話、いかがですか? サービス受ける側からすれば、手間がなく、安くお金を借りられた方がよくないですか。なので、私はその支店長にこう申し上げました。「仮にそうだとすると、そんな仕事をやるためだけに年収1500万円(地銀の支店長の平均的な給与水準)をとっているあなたは不必要ですよね。そんなことをするだけならせいぜい300万円で十分で、ATM(現金自動預け払い機)の手数料をタダにした方が、よっぽどいいんじゃないんですかね」と申し上げると、さすがに支店長は下を向いておられました。
キーポイントになるのはやはりAIで、要するに金融業は典型的なAI向きの産業であり、いの一番に人間が淘汰される業種です。早く、正確に数字を管理することはAIの最も得意とするところで、人間の仕事が残るのはごく一部、これまでにやったことも見たこともない業務に融資するかどうかの判断くらいだと思います。
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