クラシックからポップス、即興など多様な分野の音楽を演奏し世界的人気を博する弦楽器トリオ“TIME FOR THREE” のコントラバス奏者、ラナーン・マイヤー氏へのインタビューを題材に取り上げる。
いまや世界中を旅するこのイケイケのクールなトリオの始まりを見てみよう。
――『TIME FOR THREEは2001年からやっていて、カーティス音楽院で始まった。勉強はクラシック音楽だったんだけれども、それ以外の音楽もいろいろやりたくて仲間とジャムセッションしていたんだ。それを学校の事務局の人が見て、演奏のバイトをくれた。実際に演奏しに行ったら、聴衆がずいぶん熱狂しちゃって。ぼくたちは頭をかいて、まあもう1回くらいこのバイトはやってみるかと。
2回目の演奏は別の聴衆たちだったけれど、やっぱりまた熱狂的に喜んでくれた。
それでこのグループが生まれたんだ。ただ楽しみのために、パーティのような雰囲気でやっていたらすごく良い反応が得られた、というところから』――ポッドキャスト『The Entrepreneurial Musician』=『起業家的音楽家』より。
「遊び」が最初の仕事を生んだ
実のところ、音楽大学のような創造性と芸術性を育むべき場所でも、カリキュラム外のことに取り組んだり、専攻外の音楽にチャレンジすることに対しては冷たい目で見られることは多い。
たとえば、クラシック音楽を学ぶ学生がジャズも学んだり演奏しようとしたりするとに『そんな遊びをしている暇はあるのか』といった嫌味を師から言われることは日常茶飯事だ。
しかし、TIME FOR THREEは「遊び」が関係者の目に止まり、それが最初の仕事を生んだ。
そんなこと、もちろん当人たちは「想像」していなかっただろう。ましてやそれが世界的な規模の事業に将来つながるとは、誰も「想像」していなかった。
いくら想像しても、現実は想像を超えてくる。であれば、「過去に例がないから」「うまくいったケースを自分は知らないから」「発展性ある未来を想像できないから」という理由で、興味あることへの挑戦を放棄したり、憧れの仕事へのチャレンジを諦めることは誰のためにもならない。前例がないなら、作ってしまえばよい。
――『(プロ活動の本格化は)メンバーのニック・ケンダルのおかげが大きいと思う。
もうひとりのメンバーのザック(注:当時のメンバーで現在はチャールズ・ヤン)とぼくはオーケストラのオーディションで勝つことに目標を定めて頑張っていた。ザックは実際にオーケストラのポジションを勝ち取ったし、ぼくもいろんなオーケストラのエキストラ奏者の常連になっていって大きなオーディションでいい線までいくようになっていた。
一方、ニックはまだ学生でソリストや室内楽をやっていたんだ。駆け出しのソリストやアンサンブルはそんなにお金はもらえない。ニックは食うにも困っていたから仕事をする必要がぼくとザック以上にあったんだ。そんなニックが、なんとこの活動にお金を投資する決断をしたんだ。ビデオを撮ってエージェントに送ったりしてね。彼はぼくたち3人のグループに将来があり、未来に大きなお金を生み出す可能性があると確信していた』――。
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