日本橋に登場「音楽が凄いホステル」の舞台裏 「東京に音楽を根付かせたい」経営者の男気
その日も負けた。勝負に弱いとはまさにこのこと。オーストラリア一周の旅をする中でふと立ち寄ったケアンズのリーフカジノ。旅の資金にと一生懸命貯めたお金がルーレットに、スロットに、カードゲームに見事な勢いで吸い込まれていく。
肩を落としてカジノを出ようとしたとき、どこからともなく音楽が聞こえてきた。アップテンポのジャズが心地よく響く。落ちた気分を紛らわせようと音のするほうに向かう。
初めて目にした「自由で豊かな空間」
音のありかを目にしたとき、鳥肌が立った。そこはカジノの横にあるバーラウンジ。黒人の5ピースバンドがいちばん奥のステージ上で演奏している。トランペットとトロンボーン、グランドピアノ、ベースにドラム。黒いスーツにハットで全員決めて、ステージに堂々と立つ5人。
イヤフォンでは味わえない、身体で感じるドラムの振動。思わずにやけるほどに音が伸びるトランペットの高音。心地よく、軽快なピアノのリズム。奏者たちの楽しそうな笑顔。
そして何よりも、その音楽の前に広がるラウンジの景色に心を奪われた。欧米人の若い男女たちがステージの前で楽しそうに身体を揺らし、少し離れたソファーでは老夫婦が穏やかな笑顔で会話を楽しんでいる。
中国からだろうか、アジア人の家族は食事をとっていて、その近くでは子どもがうれしそうに会場を走り回っていた。店の奥のほうでキスをするカップルも。
こんなにも自由で、豊かな空間を見たことがなかった。
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