日本橋に登場「音楽が凄いホステル」の舞台裏 「東京に音楽を根付かせたい」経営者の男気

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それから6年をかけて、古民家や、倉庫に使われていたビルなどを改装して、東京と京都に計3軒を出店。しかし、騒音や運営の問題から音楽を継続的にやることがなかなか難しかった。そんなとき、広い地下が付いた新しい物件が東京に見つかる。

都営新宿線・馬喰横山駅から徒歩5分。問屋も立ち並ぶ街にCITANはある(写真:Backpackers' Japan)

その物件は、東日本橋・馬喰横山と呼ばれるエリアにあった。東京駅付近のにぎわいから外れ、服の卸問屋がある以外には特に特徴のない街。しかしかえって、それがよかった。

土地の先入観なしに自分たちの作りたい空間の良さを伝えられると思ったからだ。地下1階、地上7階の元オフィスビルを改装。上の階を個室とドミトリーがある宿泊施設とし、地下をミュージックラウンジとして設計した。

グッドミュージックをかなえる2つの工夫

バーラウンジの音響環境は、プロミュージシャンの間でもかなり評判がいいという(写真:Backpackers' Japan)

音にはこだわりたいと、設計開始当初から音響デザイナーをチームに迎え、スピーカーは音質の良さで有名な国産のTaguchiに決めた。重低音を出すためのウーハーからライブで使うメイン、天吊型のサブまで、ラウンジ内の隅々に気持ちの良い音が響き渡るように計16台ものスピーカーを設置した。

ボリュームを上げると、音は壁に反響して繰り返し耳に入ってしまい、曇ってしまう。これを避けるため、壁の構造に2つの工夫を加えた。

まず1つ目は、壁の厚さだ。普通であれば1枚の石膏ボードの上に塗装をして壁を構成するところを、3枚に増加して厚くし、音に負けて壁自身が震えないようにした。

そして2つ目は、壁の角度だ。空間を構成する壁が平行に並ぶことがないよう、目では認識することができないほどの小さな角度をすべての壁に付けた。この角度により音が異なった方角に跳ね返り、繰り返し反響することを防ぐ。

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